打点の高さは2メートル超! 車いすバスケ女子日本代表 江口侑里(九州ドルフィン)

車いすバスケットボール女子日本代表に最年少で選ばれた江口(九州ドルフィン)。世界トップ級の高さに期待が集まる=長崎市、琴海南部体育館

 座面を最も高く設定した競技用車いすを乗りこなし、かつ170センチの長身。座ったまま右手を目いっぱい伸ばすと2メートルを超える。長崎から自身初のフル代表入りを果たした江口侑里は、世界トップレベルの高さが何より魅力だ。21~27日にタイ・プーケットで行われる世界選手権アジア地区予選の女子日本代表に、メンバー最年少の22歳で選出された。

 3歳のころ、左手と左足に重度のまひがあることが分かった。「脳梗塞の後遺症」と診断されたが、深堀小3年から長崎女商高を卒業するまで、健常者チームでバスケットを続けてきた。
 「高校の時の先生が、私にしかできないプレーをすればいいと言ってくれたのが励みになっている。何をするにしても片手だったからこそ、今できるプレーがある」。女子では珍しいワンハンドシュートは手慣れたもの。難しいパスも右手一本でキャッチし、相手の届かない高さからシュートを決める。車いすに座っていても3点シュートが届く。
 車いすバスケとの出合いは偶然だった。高校2年の時、修学旅行で友達と同じようにスキーをしたいからと通ったリハビリ施設に、競技用の車いすが置いてあった。「遊びのつもりで」座ってバスケットボールを扱っていると、ちょうど居合わせた県の競技関係者に声をかけられた。
 「普段から車いすに乗っている人しかできない競技だと勝手に思っていた。興味が湧いた」。隠れた才能が開花するまでに時間はかからず、19歳の時にU25日本代表に選出。一気に頭角を現した。
 車いすバスケは選手個々の障害に応じて持ち点があり、障害が重い方から1.0~4.5点の8クラスに分けられる。コート上5人の持ち点合計が14点以内になるようにメンバー編成しなければいけない。2.5点の江口は「ミドルポインター」と呼ばれ、男子日本代表のエース鳥海連志(長崎市出身)と同じ持ち点。メンバー編成の上でも戦術面でも使い勝手が良く、今季から新たに女子日本代表を率いている岩野博ヘッドコーチも「一番期待している」と熱い視線を注いでいる。
 今大会は代替わりした日本代表が臨む初の公式戦。上位3チームに入れば世界選手権(11月・ドバイ)に出場できるとあって「今の時点でやれる精いっぱいのプレーをしてくる」と意欲的だ。昨年4月から働いているトヨタレンタリース長崎からは厚いサポートを受けており「本当に応援してもらっている。期待に応えられるように頑張ってくる」と恩返しの気持ちも強い。
 2021年東京パラリンピックで6位に入った女子代表。24年パリ大会でのメダル獲得に向けて、期待の大器がいよいよ動きだす。


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