「年金が少なそうで不安」50代自営業夫婦が老後資金作りのためにやるべきことは?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、52歳と51歳の、ともに自営業のご夫婦。教育費もそろそろ払い終えるタイミングで、自分たちの老後資金を貯めようと考え始めた相談者。自営業の人が老後の備えのためにやるべきことは? FPの横山光昭氏がお答えします。


夫婦それぞれで、自営業をしています。収入に関しては、今のところ心配なく、家計は毎月黒字だと思っているのですが、貯金がなかなか増えません。

家計は数年前から、自分たちのやり方で記録をし、管理をしています。記録を見る限りではムダな支出はあまりしていないと思っています。ただ、ボーナスなどの臨時収入がない暮らしなので、毎月残るお金を使って、時々ではありますが、仕事に関する相談を受けたり、講習会などに参加しています。帰省したり、大きな買い物をするときも、貯金や毎月の残りで賄うので、もしかするとこれ以上スピードを上げてお金を貯めるのは難しいのかなと思うこともあるのですが、やはり自分たちの老後を考えると、今のうちからしっかりやっておきたいと考えます。

今の家族構成は、夫婦と大学生の子どもが2人。上の子が大学4年生、下の子が大学2年生です。教育費がかかるのはもう少しで終わりですから、今のうちから家計の準備をし、貯められるようにしたいです。自営業の夫婦がもらえる年金額は少ないと思いますので、今から備えておくべきこと、気を付けておくべきことも知りたいです。

【相談者プロフィール】

・女性、52歳、自営業・アドバイザー系

・夫、51歳、自営業・中古車販売 ・子ども:長女大学4年、長男大学2年

・毎月の世帯の手取り収入:約68万円(妻約30万円、夫約38万円)

・貯金額:約800万円

・投資総額:0円

・退職金の準備なし

・毎月の支出の目安:43万8,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:0円(夫の事務所で負担)

・食費:10万3,000円(外食含む)

・水道光熱費:1万8,000円

・通信費:1万5,000円(スマホ妻分、ネット)

・生命保険料:2万3,000円

・日用品代:7,000円

・医療費:5,000円(サプリ含む)

・教育費:2万円(教材費)

・交通費:2万9,000円(子・妻)

・自動車関連費:8,000円

・被服費:2万8,000円

・交際費:1万5,000円

・娯楽費:8,000円

・小遣い:4万円

・その他(理美容・サブスク・その他)4万6,000円

・税・国年・国保:7万3,000円

横山:お子さんの手が離れる時期が近づいてきているので、老後資金を本格的に貯められるようになりたいのですね。確かに毎月の収支は黒字のようですが、特別支出、臨時支出の影響で、思うように貯まっていない可能性があります。

毎月・臨時それぞれの支出を選別する

毎月の家計は記録されていたようですが、臨時的な支出は記録はされていないようです。相談者様もおっしゃっているように、時々かかる仕事のコンサル料や講習会費、帰省費などもろもろの臨時支出が、貯金可能額を減らしていると考えられます。

ですが、この臨時支出にも、必要な支出が含まれていることでしょう。まずは毎月の家計以外にかかっている支出を洗い出し、それが必要なのか、そうではないかの選別をしてみましょう。

それに合わせ、毎月の家計の中で減らせる支出がないかも、臨時支出と同様の視点で見ていきます。もしかすると、食費に無駄や過剰な支出が含まれているかもしれなく、支出を減らせる見込みを立てられるかもしれませんし、スマホ代をおさえるための自分に合ったプランを見つけられるかもしれません。

お子さんの小遣いも、実は必要ない可能性があります。アルバイトをしたりし、自分でやりくりすることが多い年齢でもありますから。

支出のひとつずつについて、必要かどうかを検討すると、毎月の支出を圧縮し、臨時支出も圧縮でき、総合的に貯金可能額を増やせるのではないかと思います。

自営業が準備したいのはiDeCoと小規模企業共済

今の貯蓄は預貯金のみ、退職に向けた準備はないということですが、自営業は会社員のような退職金制度がなく、社会保障制度が「2階建て」になっていないので、できるうちに備えをしっかりしておきたいもの。自営業の方が退職金を準備するために意識していただきたいのは、iDeCoと小規模企業共済です。

iDeCoは、国が勧める私的年金制度で、自分で投資信託や債券、定期預金、保険などにお金をかけ、老後資金を作る仕組みです。60歳まで引き出せないので、老後資金作りにぴったりだと言えます。この5月から、国民年金の加入者は65歳になるまで掛け金を拠出することができるようになりました。

本来なら国民年金は60歳までしか加入できませんが、もし、国民年金の未納期間があれば、60歳以降に「任意加入」が可能です。より長く老後資金作りができる可能性がありますから、国民年金加入状況を確認し、iDeCoを始めることを検討してもよいでしょう。

小規模企業共済は、自営業をやめた時に一定額の共済金が出る仕組みです。加入期間が20年に満たないうちに解約すると、解約金は掛金合計額を下回ってしまいますが、20年以上続けると、掛け金合計額を上回ります。相談者様は50歳を過ぎているので、20年後、仕事をどうしたいのかにより加入するか否か考えねばなりませんが、知っておいて損はないと思います。

これらを検討のうえ、自営業をやめるときに備えていきましょう。

生命保険も必要な保障に見直しを

お子さんが独立する日が近づいているのなら、生命保険も現状に合わせた保障に見直してみましょう。もしかしたら、支出を下げられる可能性があるかもしれません。死亡保障などが多すぎないか、生きていく保障となる医療保障が不足していないか、多すぎないか、見直してみましょう。

できれば、中立の立場でアドバイスしてくれる独立系のファイナンシャルプランナーなどにご相談されるとよいと思います。

自営業の方が加入する国民健康保険、国民年金保険の公的な保障だけでは、万が一の場合足りないこともあります。

まず、国民健康保険は会社員の健康保険とは異なり、傷病手当金等がありません。労災保険にも加入できないので、公的保険では、休業した場合に保障してくれるものがありません。

死亡時の保障も、会社員の健康保険や厚生年金より薄くなります。国民年金は基礎年金となるものですから、死亡したり重度障害を負ったときに受けられる保障は、遺族基礎年金、障害基礎年金しかありません。遺族基礎年金は基本的に、18歳以下の子どもがいる場合にしか受けられないため、相談者ご夫婦は対象外となります。

このようなことを踏まえ、自分たちにとって必要な民間の保障を検討されるとよいでしょう。

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