20歳になったら年金すぐに納めるべき?学生納付特例制度の免除、それとも親が払う?将来のための選択

将来十分な年金がもらえるかどうかは、誰もが気になるところです。満額の国民年金をもらうためには、40年間保険料を納付する必要があります。そこで日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人は、職業や収入に関わらず、国民年金に加入することになっています。これは、学生だからといって例外はありません。しかし、本人に収入がないのに保険料を納めるのは経済的にむずかしいでしょう。かといって、親に学費以外の負担がかかってくるのも考えものです。

今回は、学生の間の年金保険料をどう支払うのがよいのかを考えていきます。


保険料を納められないときに活用したい制度

国民年金は職業によって、被保険者の種類が3つに分かれています。自営業の人やフリーランス、学生は、国民年金の第1号被保険者と呼ばれ、原則毎月の保険料を自分で翌月末日に納める必要があります。しかし、国民年金では、収入が減ってしまった、失業したなどの経済的な理由で、保険料を納めることがむずかしいときには、免除や納付猶予の制度があります。大学や短期大学、専門学校などに通う学生の場合には、本人の所得が一定以下であれば、申請で在学中の保険料の納付が猶予される「学生納付特例」があります。

保険料が納められないからといって期限までに保険料を納めずに2年経ってしまうと、その期間は未納となります。未納になると年金を受け取るための加入期間に入りません。一方、免除・納付猶予・学生納付特例の承認を受けた期間は、老後の年金以外にも、障害年金や遺族年金を受け取るための加入期間にもなります。たとえば、若い世代で病気やケガで障害が残っても、未納のままでは障害年金を受け取る権利がありません。ですから保険料を払うのが困難な場合には、未納にしないで免除や猶予、学生納付特例などを申請しておく必要があります。

国民年金保険料を納付することのメリット

本人が大学や短期大学などに在学中で一定の所得以下の場合には学生納付特例を利用できますが、あえて国民年金保険料を親が納付することで得られるメリットがあります。

令和4年度の国民年金保険料は月額1万6,590円で、年間の保険料合計は約20万円になります。学費以外にも保険料の負担が上乗せされると親は経済的にたいへんですが、親の所得税や住民税の負担を軽減できます。

国民年金保険料は、税金を計算する場合の社会保険料控除にあたります。社会保険料控除は、納税者本人の社会保険料だけではなく、納税者と生計を一にする親族の負担すべき社会保険料を納税者本人が支払った場合にも利用することができます。その年中に支払った社会保険料の全額を課税標準から控除できるので、親が子どもの国民年金保険料を支払うことで節税できるのです。

少しでもお得に割引を利用するなら、6か月・1年・2年前納や自動的に保険料が引き落としされる口座振替を利用することで、保険料を安くすることができます。前納は、まとめる期間が長ければ長いほど割引率が高くなります。

学生納付特例は10年以内であれば後から納付するができる

学生納付特例を利用して在学中は国民年金保険料を納付しない場合には、年金をもらえる受給資格の加入期間としてカウントされますが、全額免除や一部免除と異なり、老齢基礎年金額へ反映されません。つまり、将来年金をもらうようになった場合には、学生納付特例を受けた期間の保険料を納付しなければ満額もらうことができないのです。学生納付特例で承認された場合には、10年以内であれば後から納める「追納」をすることによって、老齢基礎年金を満額に近づけることができます。

追納といっても、承認を受けた期間の保険料を全部一括で支払うわけでなく、その年度の1か月分・2か月分・3か月・4か月・6か月、全部一括の中から選んで支払うことができます。ただし、承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。加算額は、大きな金額ではありませんが、年数を経ると加算額が高くなります。保険料を追納する場合には、できるだけ早く納めるほうがよいでしょう。

また、保険料を納めた分は全額所得控除になりますので、年収が高くなり、税金の負担が増えたタイミングで一括で納めるという考え方もあります。とはいえ、10年以内に納めなければなりませんので、その点は忘れずに。

追納をするためには、追納申込書を年金事務所に提出する必要があります。もし年金事務所に出向く時間が取れない場合には、国民年金保険料追納申込書を日本年金機構のHPからダウンロードできますので、添付書類を同封して郵送で申し込むこともできます。追納が承認された場合には、通知書と納付書が送られてきますので、期限内に古い月分から納めます。

追納した保険料は、全額その年の社会保険料控除の対象になりますので、年末調整や確定申告の際に添付できるよう領収書は保管しておきましょう。

追納できなかった場合に年金を増やす方法

国民年金保険料が10年間は追納できるとはいえ、まだまだ収入が低い20代の頃には過去の保険料を支払うまでの余裕がないこともあるでしょう。支払う気持ちはあっても、気づいたときには追納できる期間が過ぎていたということもあり得ます。もし、追納ができなかった場合に受給年金額を満額にするためには、任意加入制度を利用することになります。

任意加入制度は、60歳までに老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていない場合や、未納や免除期間がある場合には、自分で申請して60歳から65歳未満の5年間に国民年金保険料を納めることで老齢基礎年金を増やせる制度です。

厚生年金に加入していないときは、60歳以降でも申し出をした月以降でも、任意で加入することができます。未納期間や免除期間を埋めて年金額を増やしたい場合には65歳までの間、受給資格期間を満たしていない人は最大70歳まで加入できます。

年金の受給開始は原則65歳からですが、年金を繰り上げ受給している場合には、任意加入制度は利用できません。さかのぼって加入できないので、注意しましょう。

また、60歳以降も働いて厚生年金に加入している場合には、勤務先が給料から保険料を納めているので、学生納付特例の期間の追納ができなかったとしても老齢基礎年金の積み増しができていることになります。


平均寿命が年々延びていることもあって、定年後の過ごし方や年金の受け取り方も選択肢が増えてきました。年金の制度は改正がたびたび行われますし、就労環境の変化でライフプランにも影響が出ることもあるでしょう。年金制度は、自分で請求や申請をするものが数多くあります。知らないために損をしないよう、わからないことや困ったことがあるときの相談先や調べる方法などを確認しておきましょう。

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