ウクライナ報道で心身不調来す視聴者も 接し方には注意 「レイプ、殺害、拷問」残虐行為も伝えられ

 ロシア軍によるウクライナ侵攻から3カ月。国連によると、民間人は少なくとも3千人が死亡し、「レイプ、殺害、拷問」(米国務省)といった残虐行為も伝えられている。生々しい報道に連日接し、直接被害がないにもかかわらず、心身に不調を来す視聴者がいる。侵攻は長期化の様相で、報道との接し方に注意が必要だ。

 ロシア軍に包囲された南東部マリウポリの製鉄所。地下シェルターに避難した子どもたちが「生きて帰りたい」と懇願する。4月にウクライナ側が公開した内部映像だ。

 「みんな無事だろうか」。複数の媒体で繰り返し報道され、横浜市栄区の主婦(60)は安否が気がかりで仕方なくなった。テレビのチャンネルを変えては、続報を求める日々。「自分は何もできない。情けない」と無力感が募った。

 「結局は高みの見物」。川崎市高津区の50代パート女性も落ち込んでいた。シェルター内は食料や医薬品が不足し、「地獄よりひどい」(地元市長)という惨状で今月16日に陥落した。「私は安全。温かいご飯を食べていいのか、娯楽番組で笑っていていいのか」

 侵攻報道によって「悲しくなる」「不眠で体調を崩した」といった悩みは、県や横浜市の相談窓口にも寄せられている。

 新潟青陵大大学院の碓井真史教授(社会心理学)によると、こうした不調は精神医学で「共感疲労」と呼ばれる。当事者の境遇に感情移入し、自身の苦難のように受け止めてしまう心理作用だ。不眠、食欲不振、血圧上昇、抑うつのほか、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のような症状が表れる場合もあるという。

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