岸田首相、一転低姿勢 「検討士」で逃げ切り? 野党には焦燥感も 参院予算委

岸田文雄首相(資料写真)

 岸田文雄首相は3日の参院予算委員会を、野党からの指摘に「物価高騰の把握のために街中のスーパーへ出向く」旨の答弁をするなど慎重な低姿勢で通した。

 首相は1日の衆院予算委で食材費への対策不足を批判されて野党と激論し、政府や与党から不安の声が上がったばかり。この日の参院予算委は首相が一問一答でのフリーの質問に対峙(たいじ)する今国会最後の機会とみられ、トップバッターの自民党の片山さつき氏が「岸田インフレじゃなくてプーチンインフレ」「野党の批判は的外れ」などとかみついたことから、首相も再度の戦闘モードとなるか注目された。しかし、周囲の反応を踏まえ、迫る参院選に向けて安全運転に戻した格好だ。

 立憲民主党の福山哲郎氏は安倍晋三元首相の「敵基地攻撃を目的とした装備体系を整備することは考えていない。敵基地攻撃については米軍の打撃力に依存している」との答弁を引用。「いわゆる敵基地攻撃を含めて安全保障政策を見直す」とする岸田首相の言動を「重大な方針転換だ」として、説明を迫った。

 首相はいったん「何ら変更はない」と答えたものの「後段(敵基地攻撃に:)は変更がないが前段についての質問ですか?。勘違いしたことをおわびします」と謝罪。同党の白眞勲氏からは「総理への警備状況では厳しいかもしれないが、できれば街中のスーパーで買い物をして物価高に接してほしい」と促され、「スーパーに行くことも含めしっかり(状況を)把握したい」と応じた。

 日本維新の会の音喜多駿氏からは保険適用による出産費用の無償化を提案された。「菅義偉前首相(衆院2区)は不妊治療に保険を適用した。出産費用でなぜできないのか」とただされたが、「決して否定はしないし念頭に置きたい」と否定もしないが踏み込みもしない文言でかわした。

 また、「おわび」に続いての答弁は「いろいろ検討している段階で何も決まっていない」との内容で、野党からは「また『検討士』で逃げ切りか?」と「遣唐使」にかぶせたヤジが飛んだものの、攻め切れない野党の焦燥感も漂っていた。

 永田町で「今国会最後のヤマ場」と評された衆参予算委を乗り切ったことで、与党や政府内はほっとしたムードに包まれた。自民の閣僚経験者からは「これで細田(博之)衆院議長の問題さえなければ安泰なのに」との本音が漏れた。

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