涼呼ぶ「撫川うちわ」制作ピーク 岡山の工房、コイなど優雅な絵柄

完成したうちわを確認する平松さん(左)と石原さん=岡山市北区

 夏本番に向けて、岡山県郷土伝統的工芸品「撫川うちわ」の制作がピークを迎えている。岡山市北区の石原文雄(号・中山)さん(84)の工房では、水面から跳ねるコイやカキツバタなど涼しげな絵柄のうちわが並んでいる。

 撫川うちわは、俳句を雲の模様のように一筆書きで表現する「歌つぎ」や、光にかざすと絵柄が浮かび上がる「すかし」などの技法が特徴。江戸時代に三河(現愛知県)から岡山市西部の庭瀬、撫川地区などに伝わったとされている。

 かつては両地区で盛んに作られていたが、現在は撫川うちわ保存会「三杉堂」の平松龍四郎(号・龍山)会長(81)と石原さんの2人のみが制作。絵付けをはじめ、竹の骨組み、和紙貼りなど全て手作業で約7カ月かけて仕上げる。

 同保存会では、吉備公民館(同市北区庭瀬)で月2回、うちわ作りの講座を開いているほか、地元の小学校で出前授業し、うちわの歴史などを伝えている。石原さんは「見て楽しみ、使って涼める、優雅で実用的なうちわ。地域の伝統工芸品として後世に残したい」と話す。 

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