長崎大水害から40年 「記憶」と向き合う 長野さんら有志が写真展企画

会社に保存された被災写真のアルバムを見る長野さん=長崎市内

 死者・行方不明者299人を出した長崎大水害から今年で40年。長崎市の会社員、長野仁さん(39)ら有志が、当時の被災状況を記録した写真展を企画している。水害が発生した1982年に生まれた長野さん。「自分たちが経験していない大水害の『記憶』と向き合いたい」。そんな思いに突き動かされている。
 大水害が起きた時、長野さんは母親のおなかの中にいた。2カ月後の82年9月23日に出生。「だから、水害は写真や映像でしか知らないんです」
 現在勤める商社は浦上川沿いにあり、当時、機械や帳簿などが水没。ファクスは購入して1週間で水に漬かってしまった。被災後、社員が休日返上で社内を清掃。びしょぬれの帳簿を自宅で乾燥させる様子などを収めた写真などが会社のアルバムに保存されている。
 長野さんはアルバムをめくりながら、ふと考えた。「同じように家庭や企業に埋もれている写真があるのではないか」。世に出ていない大水害関係の写真を掘り起こし、市民の防災意識を高める契機にできないかと写真展開催に向けて動きだした。今月末まで写真を募集している。
 長野さんは、両親から断片的に当時の話を聞いてきた。行きつけのすし屋で食事をしたこと。店の前に止めた車はミラー部分まで水に漬かり運転できなかったこと…。「災害はいつ起きるかわからない。雨はすぐにやむと思って外出したのだろう」
 40年の節目にあらためて両親に「取材」している。「災害を知らない世代が大水害の教訓を継承していく必要がある」ため、3人の子どもも同席させて。このように大水害を経験していない世代が、親などに当時を聞き取る取り組みを広げたいと構想している。有志がその様子を取材し、写真展でパネル展示できないか検討中。
 写真展は7月18~24日、長崎市浜町の石丸文行堂イベントホールで開く。写真や聞き取りに協力できる人は長野さん(電080.3960.3274)へ。


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