「ヒョウモンモドキ」。日本で最も絶滅のおそれがあるチョウといわれています。広島県内には、国内で最後に残された生息地があります。
せら夢公園(広島・世羅町)で年に一度、行われているヒョウモンモドキの観察会です。
この時期は羽化が終わり、一斉に飛び回る時期です。飼育施設が特別に公開されました。
「卵を産んでいるよ。見てごらん」
産卵も確認されました。
「150個くらいある」
ヒョウモンモドキは、環境省のレッドリストで近い将来に絶滅の可能性が高いとされています。かつてヒョウモンモドキは、本州の広い範囲に分布していました。しかし、1970年代に行われた大規模なほ場整備などで、里山の自然が大きく変化したことから減少したといわれています。
現在、日本で生息が確認されているのは、世羅町と三原市だけです。そのため、11年前から種の保存を目的とした飼育が行われています。
参加者たち
― チョウ、どうでした?
「オレンジ」「初めて見たんです。生きているのは」
世羅町や三原市では、地道な保護活動が30年以上続いています。しかし、去年、幼虫の調査をしたところ、例年の3分の1以下に減少していることがわかりました。
ヒョウモンモドキは、タムラソウなどの葉の裏に卵を産み付けるため、近年、増えている大雨の影響で多くの卵が流されたと推測されています。
ヒョウモンモドキ保全地域協議会 中島秀也会長
「(成虫が)生息地によっては少ない、わずかしか飛んでいない、あるいはまったく見られないところもありました」
ことし、羽化した成虫を調べると、生息地に残された個体だけでは自然繁殖が難しい場所もあったそうです。
中島秀也会長
「せら夢公園の飼育施設で育てた個体を飼育分を残して一定数を生息地に離す」
ヒョウモンモドキが繁殖するためには、成虫のエサになるノアザミと、幼虫のエサになるキセルアザミが生える湿地が必要です。こういった生息地が現在、およそ30か所あるそうです。
保全協議会や地域の人たちが、ボランティアで耕作放棄地などを切り開き、整備しました。定期的に草刈りなどをして管理しています。
しかし、自然繁殖で生息数を増やすにはまだ生息地が足りません。ヒョウモンモドキは複数の生息地を飛び回り繁殖する特性を持っているからです。
ヒョウモンモドキ保全地域協議会 中島秀也会長
「(自然繁殖に)安定的な生息数を維持するためには500メートル以内に複数の生息地があることが理想的。それを目指して、(生息に)適した場所を探す活動を今、始めている」
ヒョウモンモドキが舞う里山を目指して保護活動は続きます。