倍の時間ゆでそうめんかさ増し、タマネギとこんにゃくが占める牛丼…食費切り詰めても「生活が」 困窮するひとり親の女性

公園で娘に寄り添う恵美さん。児童扶養手当を受け「少し楽になった」と話す=福井県内
ひとり親世帯に送る食品を段ボールに詰め込む木村さん=福井県坂井市のハーツはるえ店

 食費を節約するため、そうめんを通常の倍の時間ゆでて水を吸わせ、かさ増しする。牛丼はタマネギとこんにゃくを多く入れて、肉は少なめ。休日は子どもを遅く起こして昼過ぎに朝食を取り、1日2食にする。

 福井県内のシングルマザー、恵美さん(20代)=仮名=は、時給制の契約社員として働きながら2人の娘を育てている。今年2月、新型コロナウイルスの影響で、こども園が長期休園になった。近くに頼れる人はいない。娘たちの面倒を見るため、仕事を休むしかなかった。

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 普段の月収は手取り11万円ほどだが、「2月は4万円ほど。娘たちの大切なお年玉を切り崩して何とか過ごせたけれど、すっごくしんどかった」。翌月、市役所に駆け込んだ。「本当に生活が無理なんです」。4月から月約5万円の児童扶養手当の支給が始まり、少し気が楽になった。

 ウクライナ情勢などを背景にした急激な物価高が母娘の生活に影を落とす。子どもの送迎や買い物に必要な車のガソリン価格は高止まりし、これからの季節はクーラーの電気代も心配だ。食品の値上げも相次ぐ。「タマネギも高くて、今は牛丼の時はこんにゃくを増やしてます」

 6月5日、坂井市のハーツはるえ店の集会室に、80箱の段ボールが所狭しと並んだ。中には民間の助成金や寄付で購入した調味料、レトルトカレー、菓子、冷麺、缶詰など20品目がぎっしり。2カ月に1度、無料で届ける宛先には、経済的に厳しい状況のひとり親80人の名前が並ぶ。

 食品の詰め込み作業に追われる「女性の社会生活活動部フルード」の木村真佐枝代表(50)=坂井市=は、自身もシングルマザー。別居期間を経て離婚し、精神的・経済的に落ち込み、苦しい生活を体験した。同じ境遇の人を支援しようと、2014年にグループを立ち上げた。現在支援する登録会員は約130人。80人分の食料支援の受け付けを始めると、1日半で埋まった。

 木村さんらは5月下旬、シングルマザーらの現状を知るため、会員アンケートを行った。回答のあった80人のうち、正規雇用は48%で手取りは平均約13万円、41%が住民税非課税世帯といった結果になった。木村さんは「想像以上に困窮している状況が分かった」と話す。

 最も困っていることを尋ねると、「物価や光熱費がどんどん値上がりし、いろいろ節約しているが限界がある」「子どもが食べ盛りで食費が増え、値上げも続くが給料は変わらない」といった低賃金や物価高に対する悩みが目立った。

 国は、新型コロナウイルス禍で困窮したひとり親世帯に対し、第1子5万円などの特別給付金を複数回支給してきた。木村さんは「必要とされていたし、会員もすごく喜んではいたけれど、やっぱりそれは一時的なもの」と指摘する。「問題の本質は、女性の非正規雇用の多さや賃金の低さにある。国や政治家が力を入れてそこを変えてくれないと、根本的な解決にならない」

 県児童家庭課によると、児童扶養手当は21年度、県内で4518人に計約22億7千万円が支給された。シングルマザーの恵美さん(20代)=仮名=も今春から受給している。フルードの食料支援も受けており「すごく助かっている。どんなお菓子が入っているかな、と娘たちの楽しみにもなっている」と感謝する。半面、「普段の買い物にはなるべく娘を連れて行かない。お金がないのに、お菓子をねだられるので」とも明かした。

 離婚や失業、介護などで突然、貧困に直面する場合もある。ひとり親世帯は、子どもの自立後も貯金が少ないなど困難を抱えるケースも多い。木村さんは「みんながどの年代になっても暮らしやすい世の中になってほしい」と願う。

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