金融引き締め加速で投資環境はどう変わるか−−今夏の日本における注目ポイントは?

2022年に入り相場は下落基調が続いていますが、6月も強い下落に見舞われています。米国を代表するNYダウはコロナ相場以降維持されていた節目の3万ドルを割り込み、ナスダック・S&P500も年初来安値を続々と更新しています。日経平均株価も6月前半に28,000円台まで回復したのちに、25,000円台後半まで下落するなど、乱高下しています。

6月半ばの急落のきっかけとなったのは、各国の金融政策が引き締め方向に一層傾いたことにあります。ECB(欧州中央銀行)が7月から利上げの開始を発表したほか、アメリカは約27年ぶりとなる0.75%の利上げ、日本や欧州と同様にマイナス金利政策を実施しているスイスも2007年以来の利上げを行うなど、世界的に利上げが急速に進行しています。

6月のポイントは、常に注目度の高いアメリカの金融政策だけでなく、他地域の金融政策にも動きが見え始め、相場に影響を与えている点ではないでしょうか。今回は6月に起こった中央銀行の変化をおさらいしつつ、日本の金融政策にも触れながら、今後の見通しを見ていきたいと思います。


アメリカの金融政策は引き続き不透明感が続く

まずはアメリカの金融政策から振り返りましょう。前回会合の時点では、5月と同様の0.5%の利上げが予想されていました。しかし、6月10日に発表された5月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で約8.6%の上昇と約40年ぶりの水準となったことを筆頭に、インフレ懸念が高まり、結果として約27年ぶりの0.75%の利上げとなりました。最近ではFOMC近辺で乱高下するケースが続いていますが、今回もCPIの発表以降、不安定な値動きとなりました。

今回の利上げの結果に関して、利上げペースと水準の2点から見ていきましょう。

まず利上げペースですが、利上げを開始した3月が0.25%、5月が0.50%、そして今回が0.75%と、徐々にペースは上がってきています。また当初予想では0.50%の利上げであったのが、実際は0.75%になった点からも、インフレ対応への焦りが見て取れます。

加えて利上げ水準ですが、約27年ぶりという珍しさからもわかる通り、1回の会合で上げる率としては大きいものと言えるでしょう。FRBのパウエル議長も会見にて、「0.75%の引き上げが異例に大きな幅であることは明らかで、この幅が普通になるとは見込んでいない」と述べています。

一方で、これまでのFOMCが当初の予想より早いペースでの金融引き締めの動きになっていることを踏まえると、今後も異例と考えられるような対応がないとは言えない状況になっているのではないかと考えられます。

実際に、マーケットの予想はどうなっているのでしょうか。金利先物市場が予想する各FOMCの政策金利がわかるFed Watchツールを見ると、1.5-1.75%の金利の誘導目標に対し、次回7月も0.75%の利上げ予想が2022年6月20日時点では90%を超えています。次回会合に向けて、この予想がどう変わっていくか、経済指標の行方に注目しながら見ていく必要があるでしょう。

アメリカ以外の金融政策への警戒感が高まる

そして6月はアメリカ以外でも利上げが多く行われました。なかでも、春先は年内の利上げを模索していたECBが7月からの利上げを表明したほか、マイナス金利政策を実施するスイスも約14年ぶりの利上げを実施したのは、サプライズといえるのではないでしょうか。特にスイスの利上げはFOMC後のマーケットが不安な中での材料となり、リスクオフの動きを誘発しました

スイスの政策発表に対するマーケットの動きを見ると、アメリカの金融政策だけではなく、他国の金融政策もサプライズとなることが考えられます。2月に勃発したウクライナ侵攻を皮切りにインフレ圧力は世界的に高まっており、相対的に緩和的な政策を選好していた地域でも利上げ等の引き締め施策を余儀なくされています。

先にも触れたように、アメリカの金融政策は注目度が高いですが、思わぬ相場の波乱に巻き込まれないためにも、今後は幅広い地域の金融政策動向に一層目を向けるとよいでしょう。

日本は緩和継続で株には追い風も、円相場には要注意

世界的に利上げの波が押し寄せている中、気になるのが日本のスタンスです。日本においてもインフレの懸念は出始めていますが、その中でも日銀は粘り強い金融緩和を続けるとしています。6月16-17日に開かれた金融政策決定会合にて、他国の動きを踏まえて政策変更があるか期待されましたが、大規模緩和を継続する方針が維持されました。

他国との足並みがそろっていない中、年初から進んでいる円安の一段の進行には注意が必要です。円安による輸入物価の上昇によって、懸念されているインフレが長引くと国民の不満が高まり、現状において数少ない安心材料ともいえる、政権運営にも逆風となる可能性があります。

今後の国内の注目ポイントとしては、参議院選挙が挙げられます。現状、岸田政権の内閣支持率は60%ほどをキープしておりますが、政策論争の行方次第でどう変化するか、当然ながら7月に予定されている投開票まで結果はわからないでしょう。政治の不透明感はマーケットに嫌気されるため、状況次第では日経平均も売り仕掛けの材料とされる恐れがある点にも留意が必要です。

多方面で不確実要素が多くなっていますが、事前に状況を整理し、慌てないように備えておくとよいのではないでしょうか。

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