解剖遺体からプリオン病原体 世界初、長崎大で未診断例を確認

 極めてまれな致死性の感染症、プリオン病の病原体が、人体解剖実習用として長崎大に提供された遺体から発見された。同大の研究グループが確立した検査方法によって確認。同病の未診断例が解剖実習前の遺体から見つかるのは世界で初めて。
 発見したのは同大大学院医歯薬学総合研究科感染分子解析学のグループ。論文が米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。
 同大によると、病原体は異常型プリオンタンパク質で、主に脳に蓄積。脳の機能を侵して急激に認知症を進行させ、死に至らしめる。発症者は年間100万人に約2人とされる。
 プリオンは一般的な滅菌法では不活化されず、ホルマリンにも抵抗力がある。同大医学部・歯学部では毎年、解剖実習をしており、学生が解剖時に医療器具の取り扱いを誤ってけがをし、感染する危険があるという。
 同大は2011年、プリオン病の高感度な検査方法を確立。20年度から遺体のプリオンスクリーニング検査を実施してきた。同年度の36体は全て陰性だったが、21年度は39体中1体で陽性反応があった。解析した結果、プリオン病の特徴的な病変が見つかり、同病との診断が確定した。
 論文の筆頭著者、中垣岳大(たけひろ)同大助教によると、解剖実習の遺体を対象にプリオン病検査を実施しているのは、公表されている機関としては長崎大が世界で唯一。「解剖に慣れていない学生を感染リスクから守る目的で始めた」という。
 中垣助教は「研究者の間で、別の病因で亡くなった人の中にプリオン病未診断例があるのではと言われていたが、その可能性が一定割合あることが推測される。今後は未診断例がどれくらいの頻度で出るのかを明らかにしていきたい」と話している。


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