天災は忘れた頃に…

 梅雨入り前の先月、自宅のポストに届いた長崎市の洪水ハザードマップを眺めていて驚いた。小さな家々の中から何げなく見つけた自宅の一部が、色付けされていたのだ。土砂災害警戒区域?▲スマートフォンで調べると、危害が生じる恐れのある区域。50メートルほど離れた小さな裏山が土砂災害特別警戒区域に指定されていて、自宅はその周辺部に当たるらしい▲高台の緩やかな傾斜地に広がる住宅街。299人が犠牲になった1982年7月23日の長崎大水害でも断水や停電しか記憶になく、「自然災害といえば台風くらい」と高をくくっていた▲長崎市などがこの春、市内の自治会を対象に実施した防災アンケートによると、38%が土砂災害、17%が洪水による浸水の危険があると答え、「特に危険はない」は14%にとどまっていた▲山や谷が多い長崎は土砂崩れや河川氾濫が発生しやすいまちだが、近年、幸いにも大規模災害は起きていない。市防災危機管理室の担当者は「安心している人は多いかもしれませんが、いつ起きてもおかしくはない。どうか、そんなご認識で」▲長崎大水害を継承する取り組みを「特に行っていない」と答えた自治会の割合は77%に上った。「天災は忘れた頃にやってくる」。先人の警句をあらためて胸に刻み、大雨シーズンを乗り切りたい。(真)

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