2022参院選長崎 人口減少 やりたい仕事に出合えず 政治への視線・3

若年層の県外流出などを背景に、人口減少が進む本県。県都の人口は間もなく40万人を下回りそうだ=長崎市内

 2年前の春、長崎大に通っていた諫早市出身の男性(23)は、東京に本社がある商社に内定した。はなから県内企業を外したわけではなく、数社の説明会には参加した。しかし当時、思い描いたのは「ある程度の『給料』があって、海外赴任などの『やりたい仕事』ができる企業」。県内で出合うことはなかった。
 大阪支社に配属され、現在2年目。交通や買い物の便が良くて住みやすく、仕事のやりがいもある。いずれは「家族や友人がいて住み慣れた地元に戻りたい」との気持ちはあるが、「帰っても仕事はあるのだろうか」とも思う。長崎の就職事情に対するイメージは、就活時とあまり変わっていない。
 一方、県内の大学から関東のIT企業に昨春就職した長崎市出身の20代女性。もともと「東京に出たい」という気持ちもあり、関東を中心に就職先を探した。せっかく身に付けたスキルを十分に生かせる仕事も「長崎にはなさそう。ずっとこっちでいい」と語った。
 2014年、当時の安倍晋三首相が打ち出した「地方創生」。地方への移住促進や企業移転などを通じ、人口減少の克服や東京一極集中の是正を目指した。だが地方からの若者流出は続き、20年までに東京圏との転出入を均衡させる国の目標は24年度に先送りに。この間、本県で少子高齢化や過疎化は深刻化した。
 県は昨年3月、県内21市町の転出入窓口で「移動理由アンケート」を始めた。これまでは人口移動や就労に関する統計などを基に人口流出の「背景」を推測し対策を講じてきたが、より客観的な情報をリアルタイムで得る狙いだ。
 昨年12月までの集計で、15~24歳の男女1546人が県外転出した理由(転勤除く)は、多い順に「県内に希望業種・職種がない」(24.6%)「知識や技能を生かしたい」(16.3%)「特になし」(20%)。冒頭の2人が取材に語った理由とも重なる。
 県は新卒者の地元就職促進や雇用創出など、以前から取り組む若者向け対策の必要性が「あらためて裏付けられた」としつつ、「アンケートだけでは必要な対策は分からず、求められる業種などを今後も深掘りしていく」と担当者。
 明確な“処方箋”を描けず、手探りが続く人口減対策。県都長崎市の推計人口は6月1日現在で40万243人(前月比114人減)。このままのペースだと数カ月以内に県内唯一の「40万都市」ではなくなる。県全体も昨春に130万人を割り込んだとみられ、縮小傾向は続く。
 解散がなく腰を据えて政策課題に向き合える参院議員。長崎選挙区の各候補は人口減対策として、子育て支援や雇用創出、移住支援拡充などを掲げる。県外の企業に内定した長崎大4年の女性(21)は、こう印象を語った。「大学生の世代にはあまり響かない。この政策では人が出て行く現状を止められないのでは」


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