長崎の学校再編問題 地域の大人が教育、子どもの育ちに向き合って

「再編の議論をきっかけに地域の大人が教育や子どもの育ちに向き合うことが大事」と話す榎准教授=長崎市文教町、長崎大

 少子化を背景に児童生徒数が減っている。県内でも長崎、佐世保両市などで学校規模を適正化するための協議、検討が進む。地域の核となっている学校の存廃は住民にとって大きな問題。長崎大教育学部の榎景子准教授(教育行政学)に、子どもと地域にとって望ましい学校のあり方を聞いた。

 -学校再編の議論が増えている。
 統合せずに済むのであればそれに越したことはないが、小規模化すれば検討が必要になる。理由の一つは、子どもは集団の中で協調性や社会性を育んでいるから。特に小学校の中学年以上になると、子ども同士で認め合う関係が人格形成に大きく影響する。なので人間関係を固定化せず、多様な人と共存していくスキルを身に付けることが大切。少子化で地域に「子ども集団」が成立しにくい現代では、学校でそれを保障していく必要がある。
 教師にとっても一定規模以上が望ましい。教師は同学年や同じ教科の教師同士で学び合いながら力を付けていく。小規模化で教職員数が減れば一人当たりの校務負担が増加し、同学年・同教科の教師間での相互研さんに限界が生じるなど、教師の力量向上に影響を及ぼす恐れがある。

 -学校がなくなれば地域が衰退すると懸念する声は多い。
 確かに地域の維持存続にとって学校の存在は重要。だが、地域が活性化するか衰退するかを現在の学校が残るか否かだけで議論すべきではない。子どもの育ちこそ地域の未来を左右する。再編の議論をきっかけに地域の大人が教育や子どもの育ちに向き合い、これからの学校と地域のあり方を考えることが大事。そういう意識や態度なくして、学校の存置のみで地域の衰退に歯止めをかけるのは難しいのでは。
 統合を選択した場合も単なる数合わせに終わるべきではない。学校づくりを通じて地域の新しいまとまりと求心力を意識的につくることが大事。「学校と地域の新しい未来像」を住民自身の手でつくるかどうかが肝になると思う。

 -行政に求められることは。
 住民が議論に主体的に参画できる場をつくること。行政の案を提示し、住民に理解を促すやり方は統合ありきの印象になる。まずは住民が地域にどういう学校が必要なのか、地域の子どもたちにどう育ってほしいのかを考え、協議する場が必要だと感じる。
 そして行政側は、なぜ再編が必要だと考えているのかをメリットとデメリットを含めて教育的な観点から説明することが大切。その上で地域に学校を今のまま残すか、新しい学校と地域をつくるかをまとめていけばいい。


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