学びは「知識詰め込み型」から「探究型」に 長崎北陽台高生、地域の課題を調査

職員(右)の説明を受けながら気象観測所を見学する生徒=長崎地方気象台

 教育現場では従来の「知識詰め込み型」学習から、自ら問いを立てて解決策を見いだす「探究型」にシフトしている。その流れに沿って県教委は来年度から、文系と理系の枠を超えた「文理探究科」を長崎北陽台、佐世保南、島原、大村、猶興館の県立5高校に新設する。25日、探究学習に臨んでいる長崎北陽台高2年生のフィールドワークを取材した。
 長崎市南山手町の長崎地方気象台。天気の予報や観測のほか、防災気象情報などを担当する機関だ。この日は長崎北陽台高生10人が「総合的な探究の時間」で、40年前の長崎大水害の教訓や、地元西彼長与町の防災について研究するため、訪問していた。
 生徒は「長崎大水害時と比べ、関係機関との連携はどう変化したか」といった質問を事前に送付。気象台職員は「以前は警報発表までが業務だった。現在は(有事に)市町担当者と密に情報共有したり気象状況を説明したりするために、日ごろから関係を築いている」などと写真や資料を使いながら説明した。
 敷地内の気象観測所(368平方メートル)も見学。雨量計、温度計、積雪深計などの機能を職員が解説した。
 参加した平野想太さん(17)は「小学生のころから地震や天気の仕組みに興味があり、勉強になった。これから長与町の防災について調べるので、今日学んだことを生かしたい」と話した。
 同校では、興味関心が近い生徒がクラスの枠を超えて5人1組になり、自分たちで発見した地域の課題を調べている。防災以外のテーマは▽観光▽産業▽文化▽教育▽自然環境▽まちづくり-に大きく分かれる。各グループに担当教員が付き、情報収集に必要なフィールドワーク先は生徒が話し合って決めた。
 今後グループで研究内容をまとめ、秋に中間発表、年度末に最終発表をする予定。町職員やフィールドワーク先の関係者も招き、アドバイスをもらうという。
 教育現場がこうした探究学習を取り入れる背景には、人工知能(AI)など技術の急進展やグローバル化による社会の激変がある。その中で、さまざまな情報を活用して課題の発見・解決に協働する能力を子どもたちに身に付けさせようとしている。同校の濱栗啓吾教頭は「自分からやりたいと思う探究心こそが学びの本質。大学入試でも探究の手法を踏まえて問題を読み解く力が求められている」と話した。


© 株式会社長崎新聞社