「漱石のテーマは自由」鎮西学院大学院長・学長の姜尚中さんが講演  県立長崎図書館郷土資料センター 開館記念

「20世紀文学の可能性―夏目漱石を読む」と題して講演する姜さん=県立長崎図書館郷土資料センター

 今年3月に開館した長崎市立山1丁目の県立長崎図書館郷土資料センターで24日、鎮西学院大学院長・学長の姜尚中さんが「20世紀文学の可能性-夏目漱石を読む」と題して特別講演した。
 漱石(1867~1916年)は、姜さんの出身地である熊本市の第五高等学校(熊本大学の前身)で約4年間教壇に立っている。姜さんは学生の頃から漱石文学に傾倒し、漱石に関する著書もある。
 講演で、姜さんは漱石の新聞小説「虞美人草(ぐびじんそう)」の一文「悲劇は喜劇より偉大である」を紹介。漱石が不幸な生い立ちのため幼い頃から人生の目的を考え、大変な努力をして帝国大に入学。学歴などを手に入れ、人間関係を構築したことや、英国留学も経験した一方で漢詩も作るなど、幅広い教養を持っていたことを説明した。
 さらに「漱石は自由をテーマにしていた」と話し、自由は言論や個人、男女や夫婦などありふれた人間関係の中にもあり、自由があるから責任があると言及。「漱石の小説には自由を巡るジレンマみたいなものがあった。だから現代性がある」と強調した。
 最後に「漱石は中国と韓国の近代文学に絶大な影響を与えた。東アジア全体の共有財産として漱石を考えるべきだ」と締めくくった。同センターの開館記念で開催。市民ら約120人が耳を傾けた。

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