北関東で相次ぐ豚熱 要因と対策、日獣大・羽山教授に聞く 

栃木県那須烏山市で発生した豚熱を受け、防疫作業を進める県職員ら=24日午前、那須烏山市(県提供)

 那須烏山市の大規模農場で発生した豚熱。北関東で感染確認が相次ぐ中、日本獣医生命科学大獣医学科の羽山伸一(はやましんいち)教授(獣医学)に要因と対策を聞いた。

 羽山教授によると、豚熱は欧州でも発生している。ただ、野生イノシシなどの生息地を踏まえて「欧州の森林率は日本と比べ半分程度」と説明する。生息密度も「日本の数分の一で、比較的制御しやすい。一方で日本の環境は厳しい」と解説する。広大な山地を抱える本県などはイノシシによる感染リスクも高いという。

 羽山教授は国内の防疫体制などについても疑問視する。一つが鳥獣対策。「国の基準には、具体的にどのような柵などを設置すべきか書かれていない。都道府県や生産者に丸投げだ」と批判する。

 柵やネットを設置しても、高さや網の目の大きさによっては、イノシシを防げてもタヌキやネズミの侵入は抑えられないという。「周辺環境の特徴や生息動物に応じて助言できる専門家が、予防策の段階から関わる必要がある」と強調する。

 野生イノシシ向けの経口ワクチンも課題に挙げる。現状は海外産に頼っており、欧州並みの対策を打つには国内で量産体制を整える必要があると説明。日本では猟友会が野生イノシシの駆除に尽力しているが、「欧州のようなプロハンターがほとんどいない」とし、捕獲態勢の脆弱さも指摘した。

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