扶養の学生がアルバイトで103万円以上稼ぐとどうなる?税金の壁と社会保険の壁の違い

夏休みシーズンとなり、レジャーやお出かけの計画も進んでいるのではないでしょうか?

夏のレジャーに出かけると、夏休みでアルバイトを頑張っている学生の方をお見かけしますが、「ご家族はご存じ? 扶養は大丈夫かしら?」と気になってしまう、お笑い芸人で本物の税理士「税理士りーな」です。

今回は楽しく「扶養控除」について解説します、せっかく頑張ってアルバイトしても、それ以上に税金が増えたら 「なんて……嘆かわしい!」 ですからね。


配偶者だけじゃない! 扶養控除で子どものアルバイト代も要チェック

控除というと、パートタイムで働く配偶者が「配偶者控除」のボーダーラインを気にして、年末に近づくとお仕事を休みがち……という方も多いですね。配偶者控除は、パートタイムで働くご自身も「働きすぎないように気をつけないと」という意識が働いているようなので、夫婦で情報を共有しながら、きっちり控除を受けられる方も多いと思います。

一方、子どもがアルバイトを始めた時、子ども自身が「103万円以内にしておかないと」なんて注意してくれるでしょうか? そんなこと知ったこっちゃありません、金額なんて気にせずに稼ぎたいだけ稼ぎますし、おまけに親もアルバイトでそんなに多く稼いでいるなんて知らずに過ごしている、ということもあるのではないでしょうか?

配偶者や扶養家族は、その収入が少なければ「収入の少ない家族を養っていて大変だね。税金安くしておくね」という「控除」を受けることができます。「配偶者控除」や「扶養控除」と言われています。

所得税や住民税という税金の計算は、「所得(もうけ) ― 控除」を差し引きした残額に税率をかけて計算しますので、控除の金額は多いほど税金が安くなるということです。

扶養の基本ルール

まず、扶養という言葉は「収入が少ないので養ってもらっている」という意味で使います。そして、この扶養のルールには年間の給与収入で、103万円という「税金の壁」と130万円(パート先が大規模なら106万円)という「社会保険の壁」があります。

「税金の壁」にも2種類あって、「(1)自分が税金を払わなければいけない壁」と「(2)養ってくれている家族の税金が増えてしまう壁」があります。所得税についてはどちらも同じ103万円ですが、住民税については(1)は住んでいる地域によって90万円から100万円で異なります。

(2)については、扶養を受ける人のパートやアルバイトの給与収入が103万円を超えると、稼ぎ頭さん(扶養する人)の税の計算をするときに、受けられる控除(所得税38万円・住民税は33万円)がなくなってしまい、税金が増えてしまいます。税率は「所得 ― 控除」の金額で判断し、ほかの控除との兼ね合いで変化します。例えば、給与で年収400万円の方なら、所得税率は10%の人が多いと思いますが、その場合、38万円の控除が消えると…

所得税:38万円 × 10% = 38,000円

住民税:33万円 × 10% = 33,000円

この控除を逃すことでおよそ7万円もの税金を多く納めることになります。

一方、「社会保険の壁」は、扶養を受ける人のもうけが130万円を超えると、社会保険料を自分で負担しなくてはならなくなります。稼ぎ頭さんが自分を扶養として控除を受けていたとしても、パートやアルバイトで少ない自分の給与から社会保険料を払わなくてはならない、というものです。

例えば、年130万円を少し超えて140万円を稼いでしまったら、約20万円が社会保険料で引かれることになります。つまり手取りは130万円を割ってしまいます。

「あぁ、毎年正確にわかっていれば!」「ちょっと超えてたじゃないの」ですって?

なんて……嘆かわしい!

控除がなくなると大ダメージ! いくら税額が増える?

そんな「扶養の壁」の中でも、特にこの夏休みで気になる「学生のアルバイト」に関する「税の扶養控除の壁」について見ていきましょう。

配偶者控除や扶養控除は「38万円引いてくれる」というイメージをお持ちの方が多いとおもいますが、実は扶養のタイプによって引いてくれる「控除額」が違います。

参照:国税庁ウェブサイト「No.1180 扶養控除」

みなさん、気づきましたか? そう、とびっきり高い控除額がありますね!

その燦然と輝く「63万円」の文字、なんて……喜ばしい! ところで、表にある「特定扶養親族」とは、いったい何でしょうか?

特定扶養家族とは、給与収入が年103万円以下の扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の方をいいます。この年齢なら、所得税の計算をするとき、通常38万円控除が受けられるところを、な、な、な、なんと25万円アップの63万円控除しちゃいます!

……通販番組のように、思わず力が入ってしまいました、つまり「大学生ぐらいの子を抱えている人は金銭面で大変でしょう? 税金安くしておきますね〜」ということなんだと思います、ありがたいですよね!

ちなみに、所得税だけでなく住民税でもちゃんと多めに控除をしてくれます。住民税の扶養控除、通常33万円のところを、なんと45万円、こちらも12万円の控除額が増えてお得に税額計算されるということです。ただし、いずれもお子さんが16~18歳の場合は、一般の控除対象扶養親族となるのでご注意ください。

それでは、103万円を超えると特定扶養家族の場合、実際の節税額がどうなるかを見ていきましょう。

所得税は所得の合計=年収によって、5~45%で税率が動きます。標準的な税額は10%です。住民税は全員固定で10%です。

所得税:63万円 × 10%=63,000円

住民税:45万円 × 10%=45,000円

【合計】108,000円

なんと、アルバイトでもらう給与が年間103万円を超えてしまうことで、親の税金が合計108,000円も増えてしまうのです。さらに年収が高い場合、税率も高くなり、最大で45%の所得税率となります。

所得税:63万円 × 45%=283,500円

住民税:45万円 × 10%=45,000円

【合計】328,500円

つまり、アルバイトをしすぎてこの控除がなくなってしまうと、親の税金が最大328,500円も増えるということです。恐ろしい金額ですね……ただし、見方をかえれば、この特定扶養親族という属性と、その控除金額を頭の隅に置いておくだけで、我が子に10万円お小遣いあげてもよいぐらい節税効果がある、とも言えます。


バリバリとアルバイトをしている我が子の収入が気になりはじめた方や、「お小遣いを多めにあげて調整してもらわなきゃ!」と思われた方もいるかもしれませんね。

配偶者だけではなく、19〜22歳の子どものアルバイトにもアンテナを立てて、「うっかりしていて税金を10万円も余分に払った」「30万円以上余分に払った」という嘆かわしいことの無いように、親子間でもしっかり情報を共有して対策しましょうね!

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