汗びっしょりの実行を

 列島あちらこちらで酷暑が絶えない「汗の季節」が続いている。発汗にもいろいろあって、緊迫の場面でハラハラすれば「手に汗を握る」。恐れたり、恥じたりすれば「冷や汗をかく」…▲「米一粒、汗一粒」とは、米の一粒はそれを作った人の汗一粒に等しいことをいう。挙げれば切りがないが、きょうは“地元”を訪れて「大いに汗をかく」ことを宣言するはずの人がいる▲核兵器禁止条約に背を向けたままの「非核の誓い」は、澄んだ響きを持つのかどうか。岸田文雄首相が「広島原爆の日」の式典で宣誓と追悼の言葉を述べる▲今では当たり前に思える「原爆の日」の首相参列だが、さかのぼれば現役の首相が広島で参列したのは1971年、佐藤栄作氏が初めてで、被爆26年の夏だった。それまでは首相あいさつが代読されていたという▲佐藤氏は〈原爆によってこうむったような不幸を繰り返さない〉と、それ以前の代読にはなかった「誓い」に踏み込んだ。長崎での参列はその5年後、三木武夫首相が初めてで、核の脅威がある限り〈真の世界平和は到来いたしません〉と言い切っている▲それから40年余り。口で非核を誓うだけではなく、岸田首相には汗びっしょりの実行が問われる。言葉とは「汗のごとし」で、いったん口に出すともう取り消せない。(徹)

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