平和の尊さ 街歩きで実感 県美「祈りの花瓶展」企画 参加者ら被爆遺構を見学

県の担当者(中央)から旧長崎警察署の説明を受ける参加者=長崎市

 長崎原爆で変形したガラス瓶をスキャンし、波佐見焼で再現した作品を展示する「祈りの花瓶展2022-ナガサキを忘れない」が、長崎市出島町の県美術館で開かれている。これに合わせて6、7日、市内で街歩き企画「Around Peace Gallery」があり、被爆遺構などを巡りながら、参加者がそれぞれの平和を考えた。
 街歩き企画は「祈りの花瓶」の作者で東京在住のアートディレクター、毎熊那々恵さん(32)が、市内でまちづくりに取り組む森恭平さん(34)に声をかけ実現した。森さんは「平和」や「核廃絶」という問題に対して、花瓶という身近なものを通じたアプローチに共感。「街の風景やお店の人との会話など、何げない日常の中で平和を感じる機会を」と企画した。
 6日は県内外の4人が参加。県美術館を出発し、旧長崎警察署(旧県庁第3別館)などの被爆遺構や、長崎の歴史が分かる遺物などを、約2時間かけて巡った。
 旧長崎警察署では、県県庁舎跡地活用室の柳本寛史係長が施設の概要を解説。建物内を歩き、金属供出で一部が竹製になった手すりや地下室などを見学した。
 市内に住む伊井かおりさんは「短い街歩きでもいろんな記憶を見つけられた。広島原爆の日の6日に参加できたことも感慨深い」と満足そう。
 花瓶を販売している店舗の一つ、カリオモンズコーヒー長崎店(樺島町)も訪問。参加者がコーヒーなどを味わいながら、穏やかな雰囲気で平和や遺構の活用について意見を交わした。
 企画した森さんは「被爆や戦争の記憶を知ることはもちろんだが、普段の街の良さを感じるのも平和の一つ。街歩きから自分なりの平和を感じ取ってほしい」と話した。

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