「中長期的にはあるべき価格に収まっていく」セゾン投信・中野晴啓氏×ウェルスナビ・柴山和久氏が見る現在の市場

株安、円安、資源価格の高騰と波乱が続く2022年の相場。セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO中野晴啓氏と、ウェルスナビ株式会社代表取締役CEO柴山和久氏に、現在の相場動向をどう見ているか伺いました。


──2022年上半期は、株、為替、商品相場が不安定な状態が続きました。おふたりはこの相場をどのように見ていますか。

中野晴啓氏(以下中野):この半年間の相場は、世界が想定していたよりもインフレが進み、中央銀行の想定すらも超える状態となりました。そこに追い打ちをかけたのがロシアによるウクライナ侵攻で、エネルギー価格が暴騰し、商品価格、産業活動、私たちの消費生活などに影響を与えました。ただ、資源価格は落ち着きつつあります。原油1バレル100ドルは高いと感じますが、ここから200ドルまで上がる可能性はほとんどないと考えます。価格が安定すればやがてピークアウトしますし、物価が上がるほど消費力が落ちますので、インフレも落ち着いていくだろうと見ています。

柴山和久氏(以下柴山):短期的に見れば不安定な相場ですが、私も中野さんも長期投資の視点ですので、長い歴史の一局面として見れば、こういう時期もあるだろうと捉えています。過去30年間にわたる世界の株価を見ても、短期的には上げ下げがありながら全体傾向として上昇しています。今のように株価が下がり出すとその点に意識が向き、いつまでも下げ相場が続くのではないかと不安を感じますが、過去のデータを見る限り、下がり続けることはなく、中長期的には上昇していくだろうと思っています。

中野:そもそも株などの価格は大勢の人が買いたいと思ったら上がり、売りたいと思ったら下がるものです。つまり、チャートの値動きは人間の不安などの感情によって作られるもので、ランダムウォークですので当てにいっても当たりません。経済が長い時間軸でコンスタントに成長していくのであれば、短期的な値動きはランダムでも、中長期的にはあるべき価格に収まっていきます。これを長期投資の鉄則として理解できるようになれば、年初からの不安定な相場も感情によって右往左往することもなくなっていくと思います。

柴山:世界経済は、世界の人口と1人あたりGDP、つまり生産性に因数分解できます。そう考えると、今は人口が増えていますしテクノロジーの進化で生産性も上がっていますから、中長期的に経済が成長を続けると分かりますよね。

中野:柴山さんがおっしゃるように世界の株は上昇していますし、上がったら下がりますが下がったら上がります。過去は必ず繰り返すもの、とはいえませんが、人口が増えて生産性が向上していくのであれば、長期投資は歴史から学ぶことができ、世界経済は持続的に成長していくという高確率な仮説が立てられます。

──経済成長が人口と生産性向上で成り立つという観点で、人口が減少していく日本経済はどのように見ていますか。

柴山:下りのエスカレータを駆け上がらなければならない状態ですから、人口が減る分を生産性の向上で補わないといけません。これは世界的にも珍しい状況で、世界で最も生産性向上に熱心にならないといけないともいえます。投資についてはグローバル投資でリターンを狙うことができますが、日本で働いている限り給料は日本の会社から日本円で受け取ることになるでしょう。国内経済が上向かなければ収入は増えず、投資に回すお金も捻出しづらくなってしまう可能性があります。

中野:人口減少については、例えば、定年延長などの政策で労働生産人口を維持する方法がありますよね。また、勤労所得がなかなか増えない場合、日本人は豊富な金融資産を保有していますので、これを活用することで富を生み、総所得を引き上げていくこともできます。日本はダメだと言う論調があり、そう言い出すのも簡単なのですが、私はそうは思っていません。解決策はまだありますし、発明できると思っています。


次回は、不安定な相場での投資戦略について伺います。

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