率先垂範

 率先垂範と言えば、大げさすぎるか。先日、取材で訪れた県立清峰高ハンドボール部のコート。3年生部員が「自ら動く」姿を見て、そんな言葉が浮かんだ▲予定より早く着いたため、車の中からコートを眺めていると、3年生が先に出てきてボールや用具の準備を始めた。続いて、こちらの存在に気づいた主将が「先生を呼んできます」とひと言。「まだいいよ」と止める間もなく、彼女は校舎内に駆けだしていった▲何でも上級生がやるんだ、1年生に指示しないんだな。そう感心して金子慎吾監督(36)に指導方針を聞いてみると、苦笑いしながら「そんなたいしたもんじゃない」と返してきた。「上級生がやるのは当たり前ですよ。1年生は練習についていくだけでも大変ですから」▲これまでも上級生が先に動くチームはいくつか見てきた。ある女子バスケットボール部員は自分たちの決勝が終わった直後、汗だくのまま男子決勝のモップ係をしていた▲その時に聞いた言葉は今も忘れない。「私たちは試合に出してもらっている。そこで支えてもらった分、仕事しなきゃいけないんです」▲人がやりたがらないことを率先してやる。そんなことは誰も簡単にできないよと思いながらも、重くなった腰につぶやいてみる。「そう、まず動こうか」と。(城)

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