持病をもつ43歳のシングルマザー「両親との同居がストレスなため住宅を購入したい」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、5歳の子を持つ43歳のシングルマザー。現在は実家で両親と暮らしていますが、ストレスも多く、実家の近くに住宅を購入したいと考えています。いくらの物件なら購入可能でしょうか。FPの渡辺裕介氏がお答えします。


43歳で6歳の子を育てるシングルマザーです。現在は実家で両親と暮らしていますが、両親との生活はお互いに不満も多くストレスも大きいため、できたら実家の近くで家を買えたらなと考えています。

家は安いに越したことはありませんが、最高でも2,500万くらいしかかけられないかなと自分では思っていますが、はたして今の私の経済状況で住宅購入が可能なのか、支払っていけるのか、このまま我慢して実家で世話になる方がよいのか教えてください。

現金貯金のうち、500万円は子の口座にいれています。また、元夫からの養育費が毎月4万円あり、子ども手当とともに子の口座で貯蓄しています。持病にうつがありますが、内服薬で安定しています。ワイド団信に入れるかが、気になります。退職金はありますが100万円程度のごく少ない金額だと仮定しています。

【相談者プロフィール】

・女性、43歳、会社員 ・子供:5歳(娘は来年小学校入学を控えています)

・同居家族について:両親は今は健康。父は無職、母はパート勤務です

・住居の形態:親の家で同居(関東地方)

・毎月の世帯の手取り金額:27万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:70万円

・毎月の世帯の支出の目安:16万6,000円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万円

・食費:1万円

・水道光熱費:-円

・教育費:2万5,000円

・保険料:2万7,000円

・通信費:8,000円

・車両費:6,000円

・お小遣い:2万円

・その他:5万2,000円(iDeCoとつみたてNISA)

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:3万円

・ボーナスからの年間貯蓄額:50万円

・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,100万円

・現在の投資総額:70万円

・現在の負債総額:-円

こんにちは、ファイナンシャルプランナーの渡邊裕介です。シングルマザーの住宅購入のご相談です。ストレスの掛かるご両親との同居を解消し、実家の近くでの購入を希望しています。住宅購入にあたって、注意すべきポイントを整理していきましょう。

どのくらいの金額を借入できる?

まずは、どの程度の金額までの住宅購入が許容範囲かについてみていきましょう。

住宅ローンを組む際には、金融機関で事前審査というものを行います。これは、本人の収入や資産に対して、その物件を購入することに無理がないかどうか、安定して継続的に返済が可能かどうかなど、申込者本人の信用や返済能力に関する審査となります。

この事前審査をすると、自分自身が大体いくらくらい銀行から借り入れできるかが判断できます。金融機関にもよりますが、一般的には年収に対して返済比率35%程度、審査金利3.5%~4%で審査することが多いようです。ご相談者の年収を手取りから逆算して500万円/年と仮定します。

借入期間については、一般的には35年間、金融機関によっては40年や50年というところもあります。月々の返済を軽減するために35年で組む方も多いですが、ご相談者の場合は、退職金がほぼ無いことや、お子さまのご年齢から大学を卒業するのが60歳近くなることから、60歳以降に住宅ローンが残ると返済が厳しくなることが予想されるため、60歳での完済を目指すのが現実的です。よって、試算については借入期間20年間で考えましょう。

【計算式】
年収500万円×返済比率35%÷毎月返済額12カ月
= 14万5,833円/月 ……(1)

借入可能額2,500万円 審査金利3.5% 返済期間20年
= 毎月返済額14万4,989円……(2)

(1)>(2)…… 借入れ可能

実際は、就業年数などその他審査要件もありますが、年収だけで判断すると、大体2,500万円程度の借入れは可能なようです。ただし、銀行からは2,500万円の借り入れが可能だとしても、将来にわたって返済できないと意味がありません。

安心して返済できる金額は?

では、安心して返済できる金額はどのようになるでしょうか。家族構成や世帯年収によって様々ではありますが、年収に対して返済比率20%~25%以内が、安心して返済できる金額の目安とお伝えしています。

【計算式】
年収500万円×返済比率20~25%÷12カ月
= 毎月返済額8万3,333円~10万4,166円

仮に変動金利で金利0.45%とすると、

借入可能額2,500万円 金利0.45% 返済期間20年
= 毎月返済額10万8,943円

よって、借入額2,500万円はギリギリのラインとなります。

持病を持っている人が住宅購入時に注意すること

ご相談者は持病を持たれており、通常の団体信用生命保険(団信)に加入できない可能性があります。その場合は、「ワイド団信」と呼ばれる、持病をお持ちの方でも加入しやすい団信に入るか、団信に加入しなくても借入れが可能な、「フラット35」を利用する必要があります。

「ワイド団信」とは、病歴や持病により一般の団信に加入できない方向けの加入の条件を緩和した団信で、金利に0.3%程度の上乗せが必要となります。

その場合、以下のようになります。

借入可能額2300万円 金利0.75% 返済期間20年
= 10万3,230円

このように、年収からみると2,300万円の借り入れが一つの目安となりますが、ここに、固定資産税や、マンションの場合は管理費・修繕積立金など、住宅ローンとは別に住居関連の費用負担があります。

ご相談者の現在の家賃が5万円/月なので、住宅を購入すると、住宅関連費用が倍以上に増える計算となります。それを踏まえた上で、お子さまの教育費やご自身のリタイア後の準備が可能であれば、住宅購入も選択肢に入ってきます。

ただし、注意点は、住宅購入するということは、今回の場合だと20年間住宅ローンの返済をしなければいけなくなります。当然、安定した収入が将来にわたって継続する前提で返済計画を立てるわけです。ご相談者については、今は安定しているものの、持病をお持ちですので、働けなくなる可能性や、収入が減少するリスクも高いと言えます。住宅購入については、費用面だけでなく、これらリスクも踏まえて検討する必要があります。

購入する場合は退職時期にキャッシュで購入できるように

ご相談者の住宅購入の目的は、ご両親との同居生活の解消です。住宅購入をしなくても、賃貸で住むという選択肢もあり、その場合はお身体やお仕事の状況で、家賃の調整をすることも可能です。

もし将来的な家賃負担を考え、住宅購入を希望するのであれば、退職時期にキャッシュで買えるように今から貯蓄をしていくことをお勧めします。いざ退職を迎えた時に、そのまま賃貸で住み続ける、ご実家に戻る、終の棲家を購入するなど選択肢が増えることになります。ぜひ、住宅購入の目的を改めて整理し、将来に渡ってのライフプランを考慮した上での住宅購入計画を立ててください。

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