株安局面で人気の高配当銘柄、投資する前に覚えておきたい注意点

8月26日(金)に開催された「ジャクソンホール会議」において、パウエルFRB議長の講演が行われました。

パウエル議長は講演の冒頭で、物価の安定がFRBの責務であり、インフレ率を2%に引き下げることが、最も重要な焦点であることを明言されました。インフレ率については、7月の低下は歓迎すべきだが、低下傾向にあると確信するには程遠いとの見解を示し、9月に0.75%の利上げの可能性にも言及され、NYダウは1,008ドル安で終了しました。その後も株安の状況が続いています。


株安局面で高配当銘柄に資金流入が増える訳

そうした中、8月30日(火)に野村アセットが管理する日本株高配当70ETF(1577)が年初来高値を更新した事が話題となりました。この商品は、国内金融商品取引所に上場する全ての普通株式のうち、今期予想配当利回りの高い、原則70銘柄で構成される等金額型の指数です。

冒頭に記したように、株安を避けられない条件が背景にある場合には、確実に手にすることが可能である配当金を求める心理が加速し、高配当銘柄に資金が流入しやすくなります。ますは簡単に、配当金の仕組みについて説明します。

配当金とは企業が得た利益の一部を株主に還元するお金のことです。しかし上場しているすべての株式会社が配当金を設定しているわけではありません。業績の振るわない企業や、上場して間もない企業は事業が成長する方向へ資金を使うため、配当金を出さない傾向があります。

また、配当金はそれぞれの企業により金額が異なります。配当利回りについては「1株あたりの年間配当額 ÷ 現在の株価」で計算できます。配当金を受け取るためには、その企業の株を保有する必要があります。

権利確定日の2営業日前の「権利付き最終日」に株を保有していれば配当金を受け取ることができます。

権利付き最終日の翌日は「権利落ち日」となりますが、その日に株を売っても配当金は受け取れます。事前に日にち等をよく調べておくことをおすすめします。また、配当金は約2~3カ月後に受け取れ、株を買った口座に振込まれる形が一般的です。

年初来高値を更新した日本株高配当70ETFの組入銘柄

ここで、上記した日本株高配当70ETFに組み入れられた銘柄を紹介したいと思います。
※参照:NEXT FUNDS 野村日本株高配当70連動型上場投信

2022年8月31日(水)現在、組入れ比率が高い銘柄は石油・ガス開発を行うINPEX(1605)です。原油高の恩恵を受け今期60円配当を行う予定です。配当利回りは3.8%です。

次いで、海運の商船三井(9104)です。同社は新型コロナの影響などからコンテナ船事業が好調で、今期も業績が好調であり高配当を見込んでいます。配当利回りは14%と9月に配当を見込む企業の中でも一番の配当利回りがある企業です。

3位、4位は商社の双日(2768)、三菱商事(8058)がランクインしています。商社も商品市況の上昇を受け、各社軒並み増益の見通しで配当も増加させています。5位に損保の東京海上HD(8766)と続きます。

ただし、高配当の魅力だけで株式を購入すると危険な面もあります。

組み入れ上位のINPEXや商船三井などは原油価格やコンテナ船市況の高騰を受け、高配当に踏み切った企業です。そうした市況が下落した場合、これまで以上の業績拡大は見込めず、減配のリスクも考えられます。

現にINPEXは2020年の1株配当は24円でした。今期の会社計画は60円を予定しています。商船三井も2019年の45円に対し、前期は1200円の配当が確定しました。今期も高配当が期待されますが、来期は大幅な減配も考えられます。市況関連銘柄の配当取りは市況状況を確認して投資する事をお勧めします。

一方、商社株やKDDI(9433)、通信のソフトバンク(9434)、三菱UFJ(8306)、日本郵政
(6178)、三井住友F(8316)などの金融株、キリン(2503)、JT(2914)などディフェンシブ銘柄などは比較的長期保有に適した企業群と考えています。

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