大雨で養殖魚15万匹が死滅…福井県の宿が復活へ一歩 利用客が協力してCFこぎ着け

ヘネシー絵美さん(左)らの支援で、復旧に向けたクラウドファンディングをスタートさせた「あまごの宿」の北川雅敏さん(中央)と福田恵子さん(右)=9月1日、福井県勝山市野向町横倉

 8月の記録的な大雨で被災した福井県勝山市野向町横倉の飲食・宿泊施設「あまごの宿」と勝山淡水漁業生産組合は9月1日、本格復旧に向けたクラウドファンディング(CF)をスタートさせた。宿で提供する川魚の養殖場などの再建資金を募る。宿を利用した市民らの支援で迅速なCF開始につながり、関係者は「本当にありがたい」と感謝しつつ、復旧への思いを強くしている。

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 8月4日の大雨で宿近くの川が増水。宿に隣接する同組合の養殖場に泥水が流れ込み、アマゴやイワナなどの淡水魚約20万8千匹のうち約15万匹が死んだ。宿も浸水し、調理場の設備などが被害を受けた。

 既に営業は再開し、1日には新規の予約の受け付けも始めた。ただ、あまごの宿社長で同組合長の北川雅敏さん(69)は「残ったのは稚魚ばかりで、よそから仕入れた魚を提供するなどしている」と言う。養殖などを元通りにするには「今後2年は掛かる」と話す。

 そんな状況に支援の手が。宿を利用したことがあった勝山市のヘネシー絵美さん(39)は「報道で被災を知り、何かしたいと思った」と、同県福井市内に住む常連客の友人らに相談。8月半ばに北川さんや、北川さんの妹で宿の情報発信担当の福田恵子さん(61)にCFを提案した。

 申し出に福田さんは「涙が出た」と感謝。その後はヘネシーさんらがCF運営会社への問い合わせやサイトの募集ページの制作をボランティアで担い、半月で実施にこぎつけた。北川さんは「本当に親身に支援していただいた。いろんな人に支えられていることをつくづく感じた」と話す。

 CFは10月7日まで募集。行政補助がない見込みの養殖場や宿の設備修繕、成魚の購入などの経費300万円を目標に設定した。支援者には食事・宿泊の割引券を贈る。北川さんは「早く以前のように戻したいので、お力添えをお願いしたい」と呼び掛ける。ヘネシーさんは「今後は自分の交流サイト(SNS)などでCFのことを発信したい」と引き続きの協力を誓う。

 CFの募集ページは、あまごの宿のホームページなどから閲覧できる。

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