ネットで買わない理由

 昨日の夕方、試しに「注文」をクリックする一歩手前まで買い物を進めてみた。「お急ぎ便でのお届け予定」に示されたのは翌々日の夕方。長崎は言わずと知れた日本の西端だ。“手品”のような配達の速さにはいつも驚く▲ネット書店か、リアルの本屋さんか-は、しばしば読書好きの論争を呼ぶテーマだ。基本的には「リアル派」の筆者だが、例えば、店の棚から引っ込んでしまった雑誌のバックナンバーを手に入れたい、と考えた時には手軽なネットに軍配が上がる▲報道部の同僚G記者はもう少し筋金の入ったリアル書店派だ。できるだけ地元の店を応援したいから、という気持ちが一つ。もう一つの理由は「運ぶ人の負担をどうしても考えてしまうから」なのだという▲書籍に限らず、注文した品物がほんの数日で玄関先まで配達されるネット通販はとても便利だ。でも「自分のためだけに流通の経路を増やしてしまうことには、どうしても抵抗が」とG君▲ネット通販大手アマゾンジャパンの荷物を長崎市などで配達するドライバー15人が「労働組合」を結成した。実態に即した労働関係法令の適用や労働時間管理の適正化などを求めている▲“手品”を最終的に支えているのが、種や仕掛けの利かない配達員さんの手であるという現実を改めて考える。(智)


© 株式会社長崎新聞社