「蝶々夫人の生きざま表現」藤原歌劇団・小林さんに聞く 17日オペラ長崎公演

蝶々夫人役の小林厚子さん

 日本を代表するオペラ団体「藤原歌劇団」の24年ぶり長崎公演が17日、長崎市の長崎ブリックホールで開かれる。演目は長崎を舞台にしたプッチーニの名作「蝶々夫人」。主人公蝶々夫人役の小林厚子さん(ソプラノ)に見どころを聞いた。

 -実力派オペラ歌手になるまでの道のりとは。
 出身は長野県駒ケ根市。家族はみんな音楽好きで、ブレーメンの音楽隊のようなにぎやかな環境で育った。横浜に転居した高校2年のときに声楽家になろうと決心し、東京芸大卒業後、藤原歌劇団に入団。同大大学院オペラ科を修了し、イタリア留学を経て2000年にデビューした。

 -07年、蝶々夫人役に抜てきされた。このオペラの魅力、役作りは。
 没落士族の娘で芸者の蝶々さんが米海軍士官ピンカートンと結婚し、18歳で自害するまでの3年間の物語。単に悲劇というだけではなく、彼女が精いっぱい生きたことを表現できたらと思っている。米国に帰国した夫を待ち続ける蝶々さんが見たであろう風景、空気感をつかもうと長崎を訪れたこともある。目線やしぐさが自然でなければならないが、ピンカートンの本妻ケイト役の経験もあり、先輩演じる蝶々夫人から学んだことも大きい。

舞台で蝶々夫人役を演じる小林さん(右)(藤原歌劇団公演「蝶々夫人」(c)公益財団法人日本オペラ振興会)

 -長崎公演の全体像は。
 藤原歌劇団合唱部約30人と、舞台前にあるオーケストラピットの約50人が歌声や生演奏を響かせる。舞台裏の照明、大道具、メークさんらを含む総勢約150人が関わる。日本家屋や桜を配した舞台装置は、観客からため息が漏れるほど美しい。声でつくる舞台なので、みんなとても声を大事にして自分という“楽器”に向き合っている。団員は仲が良く、助け合い、声を掛け合っている。そんな劇団の雰囲気が大好きだ。

 -新型コロナウイルス禍、多くのオペラ公演が中止になった。本公演の意義は。
 芸術や文化活動がなくても人は生きていけるのかもしれない。だが芸術があることで暮らしの中に「ちょっといいな」という部分が増え、生きるエネルギーになれば私たちが人生を懸けてやっている意味はある。ぜひホールに来て、生の音楽を肌で感じてほしい。

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