「不安よりも楽しみ」 卓球のスペインリーグに挑む(長崎・瓊浦) 中道萌花

「人間としての芯、軸をしっかりつくりたい」とスペインリーグに挑戦する中道=長崎市、瓊浦高第1体育館

 小学生のころから長崎で結果を出してきた一方、インターハイ出場や国体代表を逃すなど悔しさが募った高校ラストイヤーの今季。「やめようとも考えたけれど、負けて終わるんじゃなくて、勝って支えてくれた人たちに恩返しがしたい」。瓊浦高卓球部女子のエース中道萌花は、9月下旬からスペインリーグ挑戦を決めた。
 長崎西高卓球部で外部コーチを務める父・昭紀さんの影響で、上長崎小3年から長崎SSTでラケットを握った。「大会に出るにつれて、特に中学からは負けたくない気持ちが強くなった」。淵中2年時に個人シングルスで夏の全国大会出場、3年時は県中総体で優勝。高校は本場、中国出身の麻生豊成監督が指導する瓊浦高を選んだ。
 入学後、最初の県高総体はコロナ禍で中止。二つ上の先輩が引退し、女子部員は自らを含む同学年の3人だけになった。それでも、男子と同じ厳しい練習を続けて「強くなれる自信はあった」。2年時の県高総体個人シングルスで優勝。全日本選手権も中学3年から3年連続で出場した。
 ただ、この1年は「守りに入っちゃったのかな」と反省する。後輩も入部してこなかったため「自分が勝たないと」という重圧もあった。結果、主要大会でライバルの鎮西学院高勢に勝てなかった。最後の県高総体は団体2位、個人ダブルス3位、シングルス5位。栃木国体の県代表もあと一歩のところで逃した。「もう、別のことをしようと思った」
 その後は「将来は海外で仕事をしたい」という思いを持っていたため、そこを踏まえながら進路相談をしていたところ、麻生監督が自らの幅広い人脈を生かしてスペインリーグ参戦の話を持ってきてくれた。「スポーツ選手は、いつ伸びるのか分からない。潜在能力はある。もっとチャレンジして世界観を広げ、それからどうするかを決めても遅くない」(麻生監督)。失いかけていたやる気が湧いた。
 9月下旬から「SonCladeraTTC」の一員として期限付きでプレーして、12月下旬に帰国する予定。言葉も文化も違う場所へ単身で飛び込むが「不安よりも楽しみ」と言い切る。高校とはオンラインで必要なことをやりとりし、通常通り来年3月に卒業予定。その後、県外の大学で競技を続けながら再び海外へ挑むかどうかを決めていくつもりだ。
 身長168センチでサーブとバックドライブを得意とする。学校では他競技の実力者が多数所属する普通科体育総合コースのムードメーカー的存在でもある。そんな高校生活で得た自信と誇りを胸に飛び込む新境地。新成人になった18歳は「人間としての芯、軸をしっかりつくれる経験にしたい」と誓っている。


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