“ウイルス感染”25万円被害 PCに精通「自分が…」 川棚の70代男性 長崎

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 ちまたでよく見聞きするパソコンの「ウイルス感染詐欺」。よもや自分がだまされるとは思わなかった。でも引っかかってしまった。「悔しい」。長崎県東彼川棚町のパート従業員、鈴木泰三(73)=仮名=はそう言って、うなだれた。
 フリーランスとして在宅勤務をしている鈴木。8月2日午後4時ごろ、いつもと同じように、パソコンに向かい依頼された仕事をこなしていた。
 突然、画面に「警告」と表示され、女性の音声が流れた。「このコンピューターはウイルスに侵されている。すぐに下記のマイクロソフトの電話番号に連絡するように」
 約20年前、自身のパソコンがウイルスに感染したことがある。妻との結婚式や新婚旅行の写真が全て消えた。鈴木にとって痛恨の出来事。「またパソコンのデータを失いたくない」と焦り、すぐに電話をかけた。
 「Windowsサポートセンター」を名乗る男が電話に出た。男は、片言の日本語で「パソコンが壊れている。修復するためセキュリティーを入れるように」「ソフトを買わないといけないからギフトカードを買ってくるように」と言った。
 鈴木は不審に思ったが、指示された通り、5万円分のアップルギフトカード1枚を買いにコンビニへ。カードの裏に書かれている番号を伝えると「あなたうそ言ったでしょ?」と問い詰められた。相手に確認すると、「2」を「Z」と間違っていた。

鈴木(仮名)の仕事部屋には犯人に購入させられたカードとレシートが残る=東彼川棚町(写真は一部加工)

 「1回間違えると使えない。後で返金するからもう1回買ってきてくれ」。そう指示され、鈴木は同じ手順をあと2回繰り返した。だが2回目も3回目も「打ち間違えた」と告げられ、口論に。男は「上司に変わります」と言った。
 電話口に出たのは「マイクロソフトのジェームズ・カカノ」という男。こちらも片言の日本語だ。「すみません。今まで払ってもらった分は明日以降に返金します」。丁寧な口調だったが、パソコン復旧のコンサルタント料としてグーグルプレイカード2枚10万円分を要求され、鈴木はそれに従った。
 コンビニで購入したカードの番号を伝えたところ、カカノは「また買ってきてほしい」。さすがにおかし過ぎると感じた鈴木は妻に相談。妻からの通報で駆け付けた警察官が電話を代わり、外国人か尋ねると、カカノは「日本人だ」と言い残し電話を切った。
 鈴木は結果的に、計4回にわたってカードを購入させられ、計25万円をだまし取られた。
 鈴木の仕事部屋にはパソコンが4台並び、自身も機械に精通しているという自負がある。それでも、だまされた。「興奮していたら分かっていても引っかかる」「早く忘れたい」と苦虫をかみつぶしたような表情で語る鈴木。「画面にお金の話が出たらシャットダウンと県民に伝えてほしい」と言った。=敬称略=

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