元寇いかり引き揚げ準備開始 松浦・鷹島神崎遺跡 データ取得、保存状態確認へ

木製いかりの引き揚げについて説明する池田教授(中央)=松浦市鷹島町、殿ノ浦港

 長崎県松浦市鷹島町の国史跡「鷹島神崎遺跡」近くの海底に埋まっている蒙古襲来(元寇)の遺物「一石型木製いかり」について、市は10月1、2両日、段階的に引き揚げる。現地で15日、準備作業が始まった。
 いかりは2013年に同町神崎免の沖合約50メートル、水深約21メートルで見つかった。長さ約1.8メートルの木製本体に同約2.3メートルの石材(推定重さ約300キロ)を貫通させたもので、この型が鷹島沖で発見されたのは初めてだった。以来、海底に銅製の網をかけ、土のうで覆って保存している。現場は、元寇の沈没船が発見され海底遺跡として12年に初の国史跡に指定された鷹島神崎遺跡の外側に当たる。
 準備では、掘削時に海底の泥が拡散しないようにフェンスを設置。土のうを除去し、いかりの保存状態などをチェック、データを取った後、引き揚げる。
 15日は同町殿ノ浦港で、長年調査に携わる国学院大の池田榮史教授、市水中考古学研究センターの早田晴樹学芸員が報道陣に説明した。池田教授は「海底から出土した大型木材をトレハロース(糖)を利用して保存する技術が進み、処理期間の大幅な短縮が可能になった。将来の沈没船引き揚げに向け、いろんな実験をしたい」と話した。
 事業費は約2千万円。市は20年11月~21年2月、ガバメントクラウドファンディングで募り、全国の229人から目標1千万円を上回る1152万3千円が集まった。昨年実施予定だったが、新型コロナウイルス禍や漁業者との調整で延期していた。
 引き揚げ当日は寄付者のうち希望した38人が見学する。引き揚げ後は10月8日から保存処理作業が始まるまで、同町の市埋蔵文化財センターで一般公開する。


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