「銃猟」免許取得で効率化? 栃木県が拡大後押し

狩猟免許試験に向け、ベテラン狩猟者から指導を受ける吉村さん(右)=7月中旬、大田原市

 わなを仕掛けてイノシシやシカを捕獲する「わな猟」。農作物被害の自衛策などとして免許を取得する人が増え、駆除の担い手の確保にもなると注目されている。免許の取得後、さらに「銃猟」の免許に挑戦する人もいる。両方の免許を持てば捕獲から殺処分までを一貫して担うことができ、効率的だ。栃木県も取得促進に取り組んでいる。

 模擬銃を構え、装塡(そうてん)や射撃姿勢を確認する受講者たち。「弾が入っていないか、確認を忘れると減点になる」。ベテラン狩猟者の助言に、真剣な表情で聞き入った。

 県猟友会が7月中旬、大田原市の県那須庁舎で開いた狩猟免許受験者向け講習会。受講者の那珂川町大内、イノシシ肉加工施設勤務の吉村康弘(よしむらやすひろ)さん(35)は、わな猟の免許取得後、銃猟の免許取得を目指した一人だ。

 仕事柄、鳥獣被害を受ける農家の声を聞くことが多く、「もっと地域の人たちを助けたい」という思いからだった。

 わな猟の免許のみでは、イノシシなど大型動物がわなにかかったと連絡を受けても、銃で止め刺し(殺処分)することができない。銃猟免許を持つ地元猟師は高齢化で人数が減っており、すぐに対応できないことも少なくなかった。過去には自分で仕留めようとして、けがをした農家もいた。

 吉村さんは「銃猟の免許を取って、地域で連携して農作物被害を減らしたい」と話す。空いた時間に筆記対策も行い、7月末の免許試験に合格。銃の所持許可を得るため、今月21日に県公安委員会の講習を受けた。狩猟試験では、町内の30代2人も新たにわな猟の免許を取得している。

 県は初心者向けの技術講習を行い、取得後のサポートにも力を入れている。農作物被害が後を絶たず、狩猟の担い手確保が課題となる中、県自然環境課は「わな猟を入り口に、銃猟に挑戦する人も増やしていきたい」としている。

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