安倍氏国葬 長崎県内でも賛否交錯… 「民意無視」抗議の座り込みも

国葬に抗議して座り込む市民ら=長崎市、鉄橋

 安倍晋三元首相の国葬が実施された27日、長崎県内では安倍氏の功績をたたえる人がいる一方で、被爆者らは抗議の意思を示すなど賛否が交錯した。県教委と21市町教委のうち唯一、公立学校に弔意に関する通知を出した佐世保市教委に対しては保護者から懸念の声も聞かれた。
 午前9時前から記帳所が設けられた平戸市役所。記帳した男性会社員(63)は「外交や防衛面で多大な貢献をされた。(国葬に)反対の声もあるが、やって良かったという声も出てくると思う」と安倍氏を悼んだ。昼休みを中心に数十人が名前を記した。
 東京で国葬が始まった午後2時、長崎市中心部の鉄橋で抗議の座り込みがスタート。被爆者団体や労組など30団体でつくる実行委員会が呼びかけ、市民ら約200人(主催者発表)が「国葬に反対します」「民意無視」などと記したプラカードを掲げた。
 参加した長崎原爆被災者協議会の田中重光会長(81)は、集団的自衛権行使を一部認めた安全保障関連法制定や「核共有」論議の提起など、安倍氏の政治姿勢を「許せない」と強調。実行委事務局の関口達夫さん(72)は「国葬に法的根拠がなく、反対の声も多いのに強行したのは、政権与党のおごりだ」と指摘した。
 通行人の中には、座り込みの趣旨に賛同して実行委メンバーと話し込む人がいた反面、「賛成だから」とチラシの受け取りを拒む年配女性や、「関心がない」と足早に立ち去る若者もいた。
 北松小値賀町役場では国葬のテレビ中継に合わせ職員の一部が起立して黙とうしたが、業務を優先する職員も。黙とうを求めた西村久之町長は「自由意思を尊重している」として強制ではないと強調。「安倍氏は8年8カ月も首相の重責を担った。離島振興などに感謝したい」と述べた。

佐世保市立学校に掲げられた半旗

 佐世保市教委は市立学校・幼稚園に「半旗の掲揚が望ましい」と通知し、判断は各校に委ねた。子どもから半旗について質問があった場合は「弔意の強制ではないと説明するよう学校側に伝えた」という。
 半旗を掲げたある学校の管理職は「国葬にいろいろな意見があるので悩んだが、国の行事であることと市教委の通知を踏まえて判断した」とジレンマを明かした。小学生の娘がいる女性(37)は市教委の通知について「子どもたちに弔意を強制することにならないか」と疑問を投げかけた。


© 株式会社長崎新聞社