愛され続け40年、70代夫婦営む弁当店ホットフーズ閉店 恋しい唐揚げ弁当…最終日に行列

営業最終日、常連客らで列ができたホットフーズ=9月26日、福井県福井市田原町

 名物の唐揚げ弁当を手頃な価格で提供してきた福井県福井市田原1丁目の弁当店が9月26日閉店し、40年の歴史に幕を下ろした。近くには北陸高校や藤島高校、福井大学があり、学生をはじめ多くの市民に愛された。最終日には、開店時間前から常連客らの列が続き、惜しまれつつ看板を下ろした。

 弁当店は、同市の石黒忠昭さん(75)と妻春江さん(74)が1982年10月にオープンした「ホットフーズ」。生肉を使用し飽きのこない味付けを心掛けた名物「からあげ弁当」は、消費税率が8%に上がるまで税込み300円台で提供を続けた。近くに高校や大学があったことから学生客も多く、社会人になってからも買いに来る人もいたという。

⇒GODIVA×森八大名閣の新スイーツ先行発売

 「うまくて安い」をモットーに人件費を抑えて安く提供できるようにと、20年近く前から基本的にお店は石黒夫妻2人で営業した。近年は春江さんが体力の限界を感じたこともあり、休日を増やしたり、営業時間を短くしたりしてきたが、店をたたむことにした。

 1週間前に閉店を知らせる貼り紙をしたところ、SNS(交流サイト)で広まり、9月23~25日の3連休も連日盛況。連休明けの最終日も午前11時前から閉店まで断続的に客の列ができた。

 30年前から利用してきたという同市の男性会社員(40)は「しっかりした味で、しょうゆとにんにくが効いていた。代わりのものがないのでどうしたらいいのか」と声を落とし、北陸高3年の男子生徒は「安くておいしいので何度か学校帰りに買いに来ていた。なくなってしまうのは寂しい」と惜しんだ。

 弁当を受け取った客からは「高校生の時から世話になったよ」「ゆっくり休んでね」など、ねぎらいや感謝の言葉を掛けられたという忠昭さんと春江さん。「こんなに優しい言葉を掛けてもらい、幸せ者だ」と、しみじみと話した。

© 株式会社福井新聞社