「北」の暴走

 トランプ氏が米大統領だった頃の笑い話を、作家の早坂隆さんがジョーク集に書いている。ある日、神様が氏の前に現れた。「神様、いつになれば国民は幸せになれるでしょう?」「10年後だ」「残念、私の任期は終わっている」▲神様は、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の前にも現れた。同じ質問をされた神様は「残念、幸せになる頃には私の任期は終わっている」。最高権力を握って11年、国民の幸せはそっちのけで、傍若無人に拍車がかかる▲北朝鮮のミサイルが、青森県上空を通って太平洋に落下した。低空を飛ばす。飛行距離を伸ばす。性能を高めることに目を凝らし、他国に与える脅威には目もくれない▲日本は、警報システム(Jアラート)を発する地域を政府が誤ったりと右往左往した。青森の住民は「ミサイルからは逃げようがない」と戸惑う▲県内でも5年前、弾道ミサイル2発が雲仙市の埋め立て地などに落とされた想定で訓練があったが、住民から「避難が間に合わない」と不安の声が上がった。宿題は積まれたままらしい▲この10年余りで、「北」の権力者は慢心を膨らませ、着々と軍事力を上向かせたが、日本では国民保護法の存在も忘れられている。「いつになれば日本は安心を手に入れられますか?」。聞かれても神様はお困りだろう。(徹)


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