第77回国民体育大会「いちご一会とちぎ国体」第7日は7日、鹿沼市のTKCいちごアリーナ(鹿沼総合体育館)ほかでバレーボールなど14競技を行った。
時間はわずか1分ほど。それでも再びコートに咲いた笑顔が観客を魅了した。バレーボール日本代表のエースとして出場した東京五輪後から長期休養に入っていた宇都宮市出身の黒後愛(くろごあい)が、所属する東レの単独チームで臨んだ成年女子滋賀代表メンバーとして故郷に凱旋(がいせん)した。休養後初の全国大会初戦はピンチサーバーとして限定出場し、勝利に貢献。本格復帰に向けて調整を続ける姿に、会場から温かい拍手や声援が送られた。
宮城との1回戦。控えの黒後は声を張って仲間を鼓舞し、タイムアウトではタオルや飲料水を運んで全力サポート。いつでもコートに立てるように、ベンチでは常に動いて体を温め続けた。
ファンが待ちに待った瞬間は2-1で迎えた第4セット終盤に訪れた。ピンチサーバーでコートイン。落ち着いて右腕を振り抜くと、会場から「おおー」という小さなどよめきが起きた。サーブ1本でコートを降りたが、観客からはねぎらいの拍手が上がった。
東京五輪後の昨年9月、体調不良による休養を発表。6月にチームへ合流し、復帰戦に8月の国体近畿ブロック予選を選んだ。本格復帰はまだ先だが、地元で貴重なワンプレーを披露した。
黒後ファンという鹿沼市、会社員安野典子(やすののりこ)さん(55)は「元気に笑顔でコートに戻ってきてくれてよかった」。芳賀町、会社員中村光章(なかむらこうしょう)さん(26)は休みを取って駆け付け、「サーブ1本でも存在感があった。プレーをもっと見たい」と次戦に期待した。
競技補助員の中高生選手たちも、憧れの「先輩」のプレーに熱いまなざしを向けた。鹿沼西中2年の長谷川夏(はせがわなつ)さん(14)は「次の試合も頑張ってほしい」とエールを送った。
黒後は「見慣れた景色と懐かしい空気に、うれしい気持ちでいっぱい。刺激をもらい、与えるプレーを見せていきたい」と声援に感謝した。