豊穣と息災願い獅子頭の祭神練る…福井県福井市で伝統神事「オシッサマのお渡り」

獅子頭をかぶった祭神の行列が練り歩き、五穀豊穣と無病息災を祈願した「オシッサマのお渡り」=10月9日、福井県福井市本堂町

 福井県福井市安居地区に伝わる県無形民俗文化財「オシッサマのお渡り」が10月9日、同市本堂町の高雄神社周辺で営まれた。新型コロナウイルスの影響で過去2年は規模を縮小したが、3年ぶりにほぼ本来の形で実施。太鼓とわらべ歌が響く中、獅子頭をかぶった祭神「オシッサマ」の行列が集落内を勇壮に練り歩き、五穀豊穣(ほうじょう)と無病息災を祈願した。

 同神社の秋季例祭の神事。集落の子どもをいけにえに出させていた怪物を、猿田彦命(さるたひこのみこと)の子孫を名乗る侍が退治したという伝説に由来する。オシッサマは猿田彦命の妻を表す。

 行列は、神社から約1キロ離れた「松手の宮」を出発した。コロナ禍前は法被を着た地元の子どもたちが「サイヨリミヨリ―」とわらべ歌を歌いながらオシッサマを先導していたが、この日は感染対策のため録音したわらべ歌を流し、子どもたちは沿道の1カ所で歌いながら行列を迎えた。

 神社が近づくにつれ、徐々に太鼓のリズムが早くなり、獅子頭を左右に振る独特の動きも激しくなった。参道に入ると豪快な舞を披露し、神社まで一気に疾走した。雨の中、沿道で多くの住民が見守った。

 安居公民館には、オシッサマのお渡りを紹介する展示コーナーがオープン。行列の様子を再現したミニチュアなどが並んでいる。

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