夢は「福井にチア専用ホール」…全米制覇JETSのOG、新たな挑戦 観光資源化へ弾むステップ

輝く笑顔で練習に励む「チアドリームプロジェクト」のメンバー=福井県福井市内

 チアダンスを福井の観光資源に―。全米大会を9回制し、ドラマや映画のモデルになった福井商業高校チアリーダー部「JETS」。全国的な知名度とチアの「元気づける力」をまちづくりに生かそうと、OGたちが立ち上げた「チアドリームプロジェクト」が今、新たな挑戦を始めている。

 2020年に一般社団法人として発足した当初から、新型コロナウイルス禍に直面した。手探りの活動は思うように進まず、公演の集客は伸び悩んだ。新規のファン開拓に向け、今年4月からビジネス界のマーケティングのノウハウを学び、活動に生かしている。

 「SNS(交流サイト)をやっていれば集客できる訳ではない」。指南役は、女性目線の商品開発や起業支援を手がける「フォレスタ」(福井市)の代表、林美里さん。活動を効果的にPRするため、モニターの意見を参考に発信方法や公演時の衣装、メークを考え、提供できるコンテンツの強化を図っている。

 現在のメンバーは5人。片岡美優さん(27)は目指すべき姿を、宝塚歌劇団とその本拠地の兵庫県宝塚市に見ている。「福井に来たらチアを見る風土ができたら」。将来的な目標はチア専用のホール開設。その実現へ一歩ずつ進んでいる。

 「チアドリームプロジェクト」のメンバーは、2018年から活動の構想を練っていた。当初20年に予定されていた東京五輪・パラリンピックや、24年春の北陸新幹線県内延伸などを念頭に、福井をPRするパフォーマンスの披露に向け、さまざまなアイデアを出し合った。

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 しかし、法人を立ち上げた20年に新型コロナウイルスの感染が広がった。人と人の接触が大幅に制限され、練習場所も借りられず、メンバーはオンラインでダンスを合わせた。

 初めての公演は、座席を一席ずつ空けて開いた。観客はチア教室に通う小中学生や、その親の40~50代女性が中心。既にチアになじみのあるファン以外になかなか広がらず、知名度も伸び悩んだ。

 昨年6月、福井市と連携した観光誘客事業が始まり、県外などで出向宣伝を担うようになった。今年4月からは、女性の才能や資質を生かすビジネスをプロデュースしている林さんのアドバイスを受け、発信力を磨いている。

 「SNS(交流サイト)に自分たちの出したい情報だけ載せてもだめ。小まめにお客さんが見たいものを提供した上で宣伝する、いい“営業マン”にならないと」。林さんがメンバーに強調する。

 林さんが運営するサロンの受講生やチア経験者ら30~60代の女性5人を招いてモニター調査も行った。「どんな宣伝だったら目に付くか」「どんな投稿が見たいか」。メンバーたちが考えたPR方法を示し、客観的な意見を聞いた。

 「飲食店のポスターは見ないかな」「メンバーの顔や人柄が分かる投稿がほしい」「JETS時代のエピソードや顧問の五十嵐裕子先生の名言集を載せてみては」…。

 さまざまな声に触れ、インスタグラムのプロフィルに、JETSのOGということも出していないと気付いた。メンバーの片岡は「自分たちの売りを再確認するために必要な時間だった」と話す。

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 メンバー5人は、JETS時代に取り組んでいた、目標を文字にして具体的なイメージをつくる「夢ノート」を今も続けている。「コロナ禍だからこそ、チアで笑顔や元気を届けたい」。福井の文化としてチアが根付くように、満席の定期公演や新規ファン獲得などを一つずつ達成していく。ノートに書かれた最大の目標は「福井にチア専用のホールを建てること」。

 メンバーのうち3人は兼業で、PRの時間も人手も足りない。それでも久保田真唯さん(29)は言い切る。「全員、全米制覇の大きな成功体験があるから頑張れる」

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