この地に生きる5(5)青井翔さん(24)=勝央町 悩むのも大切な時間

和太鼓の練習に熱中する青井さん(中央)=勝央文化ホール

 地元を離れて暮らしたことはないし、離れようと思ったことも一度もない。気軽にあいさつを交わし合える地域の人たちの温かさが好き。人と人のつながりの強さは都会にはまねのできない長所だろう。そんなまちに和太鼓で元気を届けようと、週2回の練習に汗を流している。

 小学3年生の時、地元の和太鼓グループ・勝央金時太鼓保存会のコンサートに家族で行ったのが始まり。体中に響いてくる迫力満点の音に鳥肌が立った。何より、演奏を通して会場が一つになった光景が頭から離れなくて。すぐに保存会の教室に加入した。

 地元のイベントや高齢者施設で演奏するたびに頂く拍手が続ける原動力となっている。聞いた人が笑顔になったり、行事がにぎわったりすると、地域に貢献できていると感じられるからだ。自分たち若い世代が地域の行事へ積極的に参加し、まちを盛り上げていかなければならない。今はそんな使命感も持つようになった。

 高校進学と就職活動という進路選択の際、決め手となったのは和太鼓を続けられるかどうか。高校は和太鼓の部活動があるところに進み、職業は地元工業団地の企業を選んだ。現在は保存会の継承と、結婚を機にできた新たな家族のために、和太鼓と仕事の両方をもっと頑張ろうと日々努力している。

 進路で迷っている人は、本当に自分のやりたいことは何なのかをしっかりと考えてみてほしい。私の場合、和太鼓の存在が重要な決断を後押ししてくれた。これまで何度も壁にぶつかってきたが、自分がした選択だから誤りはないと信じられた。

 18歳で夢や目標を明確にするのは難しいが、熱中していることや興味のあることを軸に考えれば答えは出しやすいだろう。一度きりの人生。後悔のないように、じっくり悩むのも大切な時間だと思う。

 あおい・かける 勝央町出身。勝間田小に通う9歳の時に勝央金時太鼓保存会の教室に入り、その後会員となった。勝間田高3年時には、和太鼓の部活動で全国大会に出場を果たした。2017年、勝央工業団地(太平台)にある業務用冷蔵庫メーカー・フクシマガリレイに就職し、1日100台以上の冷蔵庫製造に携わっている。昨年に結成35周年を迎えた保存会で若き主力として活躍する。

青井さんのメッセージ

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