ハウステンボス売却「資金必要だった」 HIS会長・澤田秀雄氏 新資本での今後に期待

 

ハウステンボスの再建や売却についての思いを語る澤田氏=東京、エイチ・アイ・エス

長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス(HTB)」を再建させた旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)会長の澤田秀雄氏(71)が18日、東京本社で長崎新聞のインタビューに応じた。HTBの投資会社PAGへの売却について、業績が悪化したHISのために、売却はしたくなかったが「資金が必要だった」と語り、新資本の下でのHTBの今後に期待を寄せた。
 HTBは経営が行き詰まり、2010年にHIS傘下となり、澤田氏の陣頭指揮での経営再建が始まった。周囲の反対を押し切っての決断、挑戦だった。
 社長に就任すると、自ら園内のホテルに住み込み、園内をくまなく歩き改革に着手。「オンリーワン」をキーワードに新たなイベントを打ち出した。閑散期の冬場にイルミネーションで彩る「光の王国」を企画し、人気アニメの海賊船を再現したクルーズなどを展開。「今までのオランダのイメージとは違う、誰もやっていないイベントにこだわった」。半年後には黒字化への転換を果たした。
 佐世保市からの再生支援交付金は当初、10年間の予定だったが、4年半で終了。佐世保市は澤田氏の功績をたたえ19年、名誉市民の称号を贈った。澤田氏はその年、社長を退任し、坂口克彦新社長に指揮を譲った。「10年ほどやって、ほぼ考えが出尽くした感じもあった。新しいアイデアが必要と思った」という。
 新型コロナウイルスの感染拡大により、海外旅行の需要は途絶え、HISの業績を圧迫。資金調達のため、HTBを手放すことになった。「若干の寂しさはあるが、十数年やってきましたからね…。売却は僕だけ反対したんだが、取締役会で決まった。僕らも資金が必要だった。でも、新たな資本で、もっとよくなると思う」と話した。
 HTBの株式評価の総額は約1千億円。「発展させなかったら、買った意味がない。(売却にあたり)雇用の維持、拡大など2、3の注文もした。いろんなイベントをして、大いに設備投資もして、HTBを元気にしてもらう。長崎県、佐世保市にとってもウエルカムなこと。みんなハッピーになれる。皆さまに今後もHTBを愛し続けていただきたい」。訪日観光客の個人ツアーが解禁され、入国制限はほぼコロナ禍前に戻った。旅行業界に光が見える中、PAGという親会社での新たなスタートに期待を寄せている。


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