自宅ガレージは八百屋「めのはち」 無人販売で近隣住民を手助け 長崎・女の都

自宅のガレージで無人販売の八百屋を営む松尾さん=長崎市女の都2丁目

 長崎市女の都2丁目の住宅街の一角。自宅のガレージを使い、野菜や果物を並べた小さな八百屋がある。自営業で船舶設計などをしている松尾英尚(ひでたか)さん(43)が、近隣住民の買い物支援や交流につなげようと、ゼロからノウハウを学び、7月に無人販売所「めのはち」としてオープン。交流サイト(SNS)や動画配信も駆使し、地域のにぎわいに一役買っている。
 同市出身の松尾さんは県外の大学に進学後、関東地方で造船会社に勤めていたが、退職し昨年11月に妻子とUターンした。女の都に住み始めると、坂が多く、徒歩圏内にスーパーがないため、買い物に苦労するという住民の悩みを聞いた。何かできることはないかと考え、使っていないガレージでの青果の無人販売を思い付いた。市場の関係者からアドバイスを受け、競りの見学を重ねて開業。日々勉強しながら運営している。
 ほぼ毎日早朝、同市琴海戸根町の青果市場に通う。農家から直接仕入れることもあり、ときには島原半島まで足を運ぶ。商品は毎日、LINE(ライン)で発信し、周辺の配達依頼にも対応。子どもたちが買い物やおつかいで利用できるよう、駄菓子や飲み物も販売している。わが子の試食動画をユーチューブで配信し、インスタグラムやツイッターでも情報発信すると地域外からも客が来るようになった。
 精算はセルフで、料金箱と釣り銭ケースを設置。電子決済サービス「ペイペイ」も利用できる。店内のインターホンを押せば、部屋で仕事をしている松尾さんのスマートフォンにつながる。
 店名は「女の都」と「八百屋」を掛け合わせた。花から花を渡るミツバチのように、人と人を結びコミュニティーをつくりたいという思いも込めている。親身に相談に乗ってくれる農家や市場の人々。看板づくりや袋詰めを手伝ってくれる家族。宣伝してくれる住民もいれば、「店ができて助かる」という声も寄せられる。「感謝しかない」と語る松尾さん。「いろんな人と関わり、家族と一つのことをできるのが楽しい。僕のものではなく、家族や住民がそれぞれ自分のものだと思えるような、みんなの『めのはち』になれたら」


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