「風流踊」無形文化遺産へ 「平戸のジャンガラ」など、長崎県内3地区は歓喜

平戸港交流広場で披露された「平戸のジャンガラ」=8月18日、平戸市崎方町

 全国各地に伝わる「風流踊(ふりゅうおどり)」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産へ登録するよう勧告された。構成する長崎県内の「平戸のジャンガラ」「大村の沖田踊・黒丸踊」「対馬の盆踊」(いずれも国指定重要無形民俗文化財)の保存会などは、郷土で受け継ぐ伝統芸能が世界に認められた喜びとともに、新たな視点で次世代に伝えていく決意を語った。
 大村市の二つの踊りは戦国時代、大村領主の大村純伊(すみこれ)が領地を回復した際、領民が祝いのため踊ったと伝わる。黒丸踊は重さ約60キロの大花輪を背負った出演者や武士に扮(ふん)した子どもたちが優雅に舞う。大薩摩黒丸踊保存会の前川與会長は「先人の歴史を受け継ぐ立場として、継続できるよう頑張りたい」と意気込んだ。

(写真上から)大花輪を背負った出演者や武士に扮した子どもたちが舞う黒丸踊=2019年11月28日、大村市黒丸町、刀やなぎなたを持った子どもたちが勇壮に舞う沖田踊=2015年10月11日、大村市幸町

 「グローバルな視点で認知度を高めていきたい」と話すのは、沖田踊保存会の沖田秋徳会長。沖田踊は黒装束の子どもたちが刀やなぎなたを持って勇壮に踊り、本来は農家の長男が舞い手を担っていたという。「現在は女の子も積極的に参加している。人材育成を目指して機会があるごとに披露していきたい」と話した。
 「対馬の盆踊」は、対馬市峰町の三根上里と吉田、厳原町の阿連と曲の4地区の盆踊りで構成。室町時代の念仏踊りにさかのぼるとされ、男性が2列縦隊で踊る独特の形式が伝わる。

男性が2列縦隊で踊る「対馬の盆踊」=2022年8月、対馬市峰町三根上里地区

 4地区でつくる「対馬盆踊保存連合会」の永留安生会長は「まさか世界に認められるとは。伝統をつないできた先人の偉大さを感じる」としみじみ。「付けてもらう箔(はく)を生かし、郷土芸能のPRや、新たな人材発掘を進めていきたい」と力を込めた。
 平戸市内9地区10集落で継承され、紙の花飾りが付いたかさをかぶった踊り子が五穀豊穣(ほうじょう)などを祈願して舞う「平戸のジャンガラ」。江戸時代初期の文献に記述があるものの起源は定かではなく、かねと太鼓の音色から「ジャンガラ」と名付けられたとされる。
 大志々伎地区ジャンガラ保存会の久松宏秋会長は「踊り子の中心となる子どもを集めるのが厳しく、町内の住人で指導役などを務めるのも難しくなっている。喜んでばかりもいられない」と担い手不足を懸念。ジャンガラの保存活動に携わる松浦史料博物館学芸員の久家孝史さんは「今の子どもたちが次の世代に受け継いでくれるよう、しっかりジャンガラを伝えたい」と決意を新たにした。


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