ヤマビル生息域拡大 被害増受け、栃木県がマニュアル 「重曹」効果も検証へ

生息域が拡大しているヤマビル(県提供)

 人や動物の体に付着して血液を吸う「ヤマビル」による被害の増加を受け、栃木県は本年度、対策マニュアルを作成した。生息域は奥山から里山へと広がっているといい、被害防止対策や対処法などを盛り込んだ。県農業試験場の研究では炭酸水素ナトリウム(重曹)にヤマビルを防除する効果が認められており、今後検証を進める計画だ。

 ヤマビルは体長1〜5センチほど。日陰の湿った場所を好み、暗く落ち葉が堆積している場所などに生息する。4〜11月が活動期間で、人やシカ、イノシシなどの野生動物に付着して吸血する。症状には個人差があるものの、血が止まらなくなったり皮膚の腫れなどを引き起こしたりする。

 2021年度の県の調査では足利、栃木、佐野、鹿沼、日光、矢板、那須塩原、塩谷の8市町で生息を確認。生息域は県内の森林面積の約2割に及んだ。ヤマビルを媒介する野生動物の増加などに伴い、範囲が拡大しているとみられる。

 農業者や住民、観光客らの被害が相次いでいるという。

 対策マニュアルでは、被害を防ぐポイントなどを紹介。個人が取り組める対策として、長袖長ズボンなど露出の少ない服装を推奨し、吸血被害を受けた場合、食塩や消毒用エタノールをかけるなどの対処法をまとめた。

 また、県農業試験場で21年度に実施した室内試験では、新たに重曹に殺虫・忌避効果があることが分かった。現在、ヤマビルの侵入や定着を防ぐには草刈りや落ち葉さらい、薬剤散布などが有効とされている。

 県森林整備課は「重曹は入手しやすく安全性も高いため、より簡単に対策できる」と期待する。今後、効果的な散布方法などを検証する。

 対策マニュアルは県ホームページに掲載している。

 

© 株式会社下野新聞社