躍進支えた地道な強化 裾野拡大へ問われる一手 【いちご一会のレガシー とちぎ国体・障スポ閉幕】②マイナー競技

銃剣道で初優勝を飾った本県少年男子。躍進を競技力の維持と普及につなげられるか=10月9日午後、壬生高体育館

 長さ166センチの木銃を次々と繰り出し、胴や喉元を突く。強豪の高知県を寄せ付けない快勝。10月9日、国体の銃剣道で本県の少年男子が初優勝を飾った。

 競技別総合優勝を果たした馬術を筆頭に、本県はセーリングなどでも得点を稼ぎ、競技人口の少ないマイナー競技の活躍が目立った。中でも銃剣道は地元国体を見据え、地道な強化が実った例の一つだ。

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 指導が始まったのは2014年。「クラブでやっている小学生が少数。高校生はほぼゼロ」。県連盟指導部長の鈴木利広(すずきとしひろ)さん(55)=陸上自衛隊宇都宮駐屯地=は振り返る。

 当時の競技人口は、自衛官を中心に成年選手が占めていた。県連盟は若手の育成のため、文星芸大付高と連携。部員が多く、県内でも実力のある剣道部の一員を“二刀流”で育て上げる狙いだった。

 15年から全国高校生大会に選手を送り出し、21年には国体メンバーとなる同校の真鍋翔吾(まなべしょうご)、斎藤広人(さいとうひろと)が県勢初の表彰台に上った。選手数が少ない半面、「一極集中の強化が生きた」と鈴木さんは実感を語る。

 ただ、競技の裾野を広げることは長期的な課題だ。今後の国体で対象となり得る女子選手への普及も考えなければならない。鈴木さんは「栃木の強さを継続できるかが重要」とした上で「競技力を示すことが普及になるのか」と、板挟みの気持ちも抱える。

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 1980年の栃の葉国体を契機に、競技が県内で広まった代表的な例にホッケーがある。部活動が相次いで立ち上がり、強化も本格化。後に実業団チームも発足し、競技力や選手の活動環境も整った。今や「お家芸」とも呼ばれる存在だ。

 目に触れたり、体験したりする機会の少ないマイナー競技。「見られることがモチベーションになる」「国体は晴れの舞台」。選手や競技団体関係者はそう口をそろえ、今後の注目の高まりや普及を期待する。

 今大会はビーチバレーの実施に合わせ、足利市が専用コートも整備した。「ここを聖地にしないといけない。国体の盛り上がりや注目度を、一過性にしないことがわれわれの使命」。県ビーチバレーボール連盟の織田祐蔵(おだゆうぞう)会長(69)は強調する。

 競技の輪を広げていくために、マイナースポーツこそ国体が残した財産の活用は不可欠だ。関係者のアイデアと実行力が試されている。

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