爆心地に子どもの遺骨 実話を絵本に 被爆者の竹下さんと被爆漫画家の故西山さん

挿絵を手がけた西山さん(左)と竹下さん=2020年1月、福岡市内(竹下さん提供)

 長崎市の被爆者で被爆遺構の保存に取り組む竹下芙美さん(81)が、爆心地近くで幼い子どもの遺骨を発掘した実話をモチーフにした絵本を出版した。「被爆当時の私と同じくらいの子どもが、命を落とした事実を残したい」。そんな思いに突き動かされ、友人で反戦反核の思いを一つにする被爆漫画家の故西山進さん(10月に94歳で死去)と、共に作り上げた。

 タイトルは「忘れないで 長崎原爆とさくらこちゃん」。1996年春、爆心地公園の再整備工事で人骨などが見つかり、竹下さんが1カ月余り発掘調査に取り組んだエピソードを基にしている。子どもの骨の性別は不明だが、色が付いたボタンやおはじきも見つかり、竹下さんは女の子だと想像。「さくらこちゃん」と名付けて心の中で弔ってきた。

絵本「忘れないで 長崎原爆とさくらこちゃん」を出版した竹下さん=長崎市役所

 3年ほど前、80歳が近づく中で絵本を作ることを思い付いた。「生き残った人がほとんどいない爆心直下で何が起こったのか。発掘した一人として残さなければ忘れられてしまう」。事実を伝えつつも、子どもに親しんでもらえる作品にしたいと、優しい作風の西山さんに挿絵を依頼。「同じ被爆者として多くを語らなくても私の気持ちを理解し、イメージ通りに描いてくれた」と振り返る。
 文章は構想から2年ほどかけて、竹下さんが書き上げた。その間には皮膚がんが判明し、入院や手術を経験。体調に不安を抱えながらも、知り合いの記者や編集者、印刷業者など10人以上の協力を得て完成させた。竹下さんは「絵本を読んだ子どもたちに戦争や原爆はだめと感じてもらい、大人になっても思い出してほしい」と願っている。
 A4判、21ページ。長崎市内の小中学校や図書館に寄贈し、販売もしている。1200円。問い合わせは「忘れないで さくらこちゃん 絵本プロジェクト」のメール(sakurakonagasaki@gmail.com)へ。


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