文科省「給食時の会話可能」に 長崎県内は「黙食」継続 対応一任で学校現場苦慮

 政府の新型コロナウイルス対策の基本的対処方針から「黙食」の文言が削除されたことに伴い、文部科学省は先月下旬、学校給食の際、適切な対策を取れば「会話は可能」とする通知を都道府県教育委員会などに出した。だが長崎県内の感染者数は高い水準で推移しており、学校現場や市町教委は黙食を含め慎重な対応を当面続けそうだ。
 文科省の学校向けの衛生管理マニュアルは従来から黙食に触れず、飛沫(ひまつ)を飛ばさないように▽机を向かい合わせにしない▽大声での会話を控える-といった対応を必要としていた。そんな中、県内21市町教委のうち学校現場に黙食を明示して求めていたのは松浦、小値賀、佐々、新上五島の4市町教委。ただ他の市町の多くの学校でも感染防止対策の一環として黙食を実践していたとみられる。
 本紙の取材によると、ほとんどの市町教委は今回の通知を各校に周知した上で、具体的な対応は学校現場に委ねる方針だ。
 五島市のある小学校は黙食を継続する。校長は「市内でも感染者が発生しており、学校現場で感染が広がると大変。黙食を取りやめることはかなり慎重に考える必要がある」と話す。佐世保市のある中学教諭は「生徒たちが会話を楽しめるのが望ましいが、感染して欠席する生徒が増えると学校行事にも影響が出かねない」と頭を悩ませる。当面は窓を空けて全員が前を向き黙食する。大村市教委も「学校現場は用心のためこれまで同様に黙食の対応となるだろう」とみている。
 管理栄養士で日本感染症学会評議員を務める長崎国際大健康管理学部長の野村秀一教授は「黙食は高い感染防止効果がある一方、友達と会話をしながら食事を楽しむ経験も非常に大切。給食は教育の場の一つでもある。毎日しっかり健康チェックをしていれば、感染リスクは抑えられるだろう」と強調。一方で「現場の先生たちは感染防止の責任も担っており、対応に苦慮すると思う。国はより具体的な判断基準や今後の方向性を示してほしい」と話した。


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