生徒と新聞の“距離感”縮める 「長崎県NIEフェア」 瓊浦高が公開授業

SDGsの記事について、生徒が発表や質問をした公開授業=長崎市、メルカつきまち

 新聞を使った教育活動(NIE)を紹介する「第12回長崎県NIEフェア」が11月9日、長崎市築町のメルカつきまちで開かれた。「生徒と新聞をゆるやかに結びつける試み」を進めている瓊浦高(同市)の公開授業や研究発表などを通してNIEの可能性を探った。

 県NIE推進協議会(本田道明会長)が主催し、県教委と県私立中学高等学校協会が後援。県内の教育関係者ら約70人が参加した。開会式で本田会長は「(NIEを通して)社会人として社会性やスキル、さらに主権者としての力を身に付けることにつながる。生徒と教員が同時に育つ」とあいさつした。
 瓊浦高は、日本新聞協会のNIE実践指定校となり3年目。「自分らしく輝ける未来」を創造することをテーマに掲げる普通科「未来創造コース」2年の2クラスを対象に週2時間、NIEの授業を行っている。教室のすぐそばに新聞コーナーを設けて本紙や全国紙など6社の新聞を置き、新聞を読む習慣がない生徒たちにまずは手に取ってもらい、紙面の構成などに慣れさせるところからスタート。記事のスクラップや新聞社への投稿などを通じて新聞との“距離感”を縮めながら授業内容をステップアップしてきた。
 公開授業には2年生20人が参加し、うち8人が興味を持った「ドングリの森を山中に整備」「取りすぎない漁半世紀」「日本の食 裏に“奴隷労働”」などの記事が国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17目標のどれに当たるかについて発表した。
 松岡皇征さん(17)は、長崎大の感染症研究拠点の「出航式」に関する記事(9月27日付長崎新聞)を紹介。SDGsの「すべての人に健康と福祉を」など三つの目標に関連するとして、「今後どのような研究が行われ、ワクチンも開発され、どう世界に普及していくのか注目している」と述べた。
 田中天馬教諭(28)は「新聞を読み、どう思って行動に変えるか、そういうアクションがあって新聞の意義が深まる」と指摘した。
 研究発表では、本馬晴子教諭(41)が生徒の新聞離れの現状を踏まえ、NIEの授業を通して社会性の育成、特に言語力や常識力を身に付け、将来の進路選択の幅が広がるよう指導しているとし、仲間と共に学ぶ大切さも強調した。

新聞を活用した授業について発表する本馬晴子教諭(右)=長崎市、メルカつきまち

 本馬教諭はさらに「新聞は社会に目を向ける姿勢をつくることや、学びを駆動させる力を持っているのではないか。重要性を改めて感じることができた」と報告。2年生は来年度には成人になるが、社会に目が向いていない生徒も少なくないとし、「成人になるために心構えをつくっていく必要がある。そのスキルを身に付けるために新聞と生徒をゆるやかにでも結びつけていくことが大切」と述べた。
 県NIEアドバイザーの草野十四朗氏は「生徒たちが問題を提起し、自分事や地域の課題として受け止めるという点でも優れた実践だった」と評価した。
 記念講演では、日本NIE学会副会長で愛知教育大教授の土屋武志氏(長崎市出身)が登壇。「平和と民主主義社会を支えるNIE」のテーマで、新聞を通して多様な考え方を学ぶ意義を訴えた。
 閉会式では、瓊浦高の渡川正人校長が「このフェアで得たものを自分の学校の実態に合った形で取り入れ、他の先生にも発信し、県全体のNIE教育の普及、充実につなげてほしい」と参加者に呼びかけた。

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