<長崎この1年>『ハウステンボス売却』 「高い成長性」に期待感

PAG傘下で新たにスタートしたハウステンボス=9月30日、佐世保市

 今年7月、旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)が長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス(HTB)」の売却を検討しているというニュースが報道され、県内の観光、行政、経済界に衝撃が走った。
 「事業、雇用はどうなるのだろうか」。関係者の不安が広がる中、HTBは8月30日、HTBの全株式を香港を拠点にする投資会社PAGに売却すると発表。9月30日、HTBはPAGという新たな資本傘下で運営を再スタートした。
 HISは新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、財政改善のために、保有するHTBの全株式を売却。九州電力など九州財界5社も保有するHTBの全株式を売却し、売却額は総額約1千億円となった。
 HTBは中世オランダの街並みを再現し、1992年に開業した。2003年に経営破綻。10年にHISが経営再建に乗り出し、本県、九州の観光をけん引するテーマパークに成長した。
 PAGはHTBについて「集客力向上の可能性、レジャー市場の回復の見込みなどを踏まえ、高い成長性を有する企業」として、新たなアトラクションやイベントへの大型投資でテーマパーク事業を拡大する方針。マーケティング会社「刀」(大阪市)がブランディング・運営を支援。代表取締役CEOの森岡毅氏は大阪市のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の経営再建などで知られ「長崎を起点として九州全域、ひいては日本の経済活性化に貢献できると考えている」とコメントしている。
 HTBは今年開業30周年。今月、オランダゆかりの人気キャラクター「ミッフィー」の体験型施設「ナインチェ」をオープンさせるなど、集客力向上に向け各種イベントを展開している。佐世保観光コンベンション協会の飯田満治理事長は「一時はどうなるか心配だったが、伝統を引き継ぎながらの新しい試み、企画が楽しみだ」と、成長戦略に期待を寄せる。
 大型投資は数年度になるとみられ、県と市がHTBに誘致を進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の動向も合わせ、注目が集まる。


© 株式会社長崎新聞社