命の重み考えて 「メッセージ展」宇都宮で始まる【動画】

被害者52人の等身大オブジェが並ぶ会場=16日午前、県総合文化センター

 事件事故で命を奪われた被害者の等身大オブジェや靴を展示する「ミニ生命(いのち)のメッセージ展inとちぎ」が16日、栃木県宇都宮市の県総合文化センターで始まった。交通事故遺族の和気(わき)みち子(こ)さん=矢板市=が独自に企画し、県内の事件事故の遺族と一緒に準備を進めてきた。和気さんは「命の重みを伝える被害者の声なき声を感じ取ってほしい」と訴えている。18日まで。

 会場には52人分の白い等身大オブジェが並ぶ。事件事故で亡くなった全国の1~71歳の被害者たちだ。子どものオブジェの近くにはクリスマスの装飾も。「雰囲気を和らげられるように」と和気さんはほほ笑む。

 22年前、飲酒・居眠り運転の大型トラックに長女由佳(ゆか)さん=当時(19)=を奪われた和気さん。悪質運転の厳罰化に取り組み、今春まで17年間、被害者支援センターとちぎの初代事務局長を務めた。

 県内で開催された同展は、自治体や関係機関の主催が多い。和気さんは「被害者の心情、苦しみは伝え続けないと忘れられてしまう」との危機感から、由佳さんの23回忌に合わせて遺族主体での開催を企画した。

 01年の鹿沼市職員殺害事件で夫の守(まもる)さん=当時(57)=を亡くした小佐々洌子(こささきよこ)さん(75)に協力を打診。2人は長年、共に被害者支援に取り組んだ間柄で、事件の風化を危惧する小佐々さんも快諾した。他の遺族にも声をかけ実行委員会を組織した。

 来場者向けにハートのブローチを記念品として用意するなど工夫を凝らした。和気さんは「22年間の思いが積み重なって開催できた。伝え続けます」と語る。

 来場したさくら市氏家、無職高橋隆夫(たかはしたかお)さん(67)は、交通事故で他界した知人のオブジェと向き合った。「改めて悲しみがよみがえってきた。交通安全に一層気を付けたい」と話した。

 会場には、12年に京都府亀岡市で集団登校中の児童らの列に車が突っ込んだ10人死傷事故などの被害者のオブジェも並ぶ。午前9時半~午後5時半(18日は午後4時半)。入場無料。

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