瀬戸内海にすむ珍しいサンゴの一種「オノミチキサンゴ」が笠岡諸島の近海に生息していることを山陽新聞社の記者とカメラマンが確認した。34年前の1988年に同社取材班が潜水取材中に発見したのと同じ場所。地球温暖化に伴う水温上昇や海水の貧栄養化など環境の変化にさらされながらも、静かに命の明かりをともし続けていた。
水深約10メートルの岩場。グレー調の視界の中に色鮮やかなオレンジ色の2体が並んでいる。上から見ると、大型は長径70センチほどの長円形。小型は縦10センチ、横20センチほどの長方形。石灰質の枝を四方八方に伸ばし、その隙間には小さなカサゴやカワハギの仲間が身を隠していた。
来年から本紙朝刊で連載する企画「里海からの警告 豊かな循環へ」の取材中に確認した。
オノミチキサンゴはイシサンゴ目キサンゴ科に属し、イソギンチャクのような小さなポリプ(サンゴ虫)がたくさん集まってできる。岡山大牛窓臨海実験所(瀬戸内市)は「岡山県近海ではめったに見られることがなく、34年前に発見したものと同じサンゴではないか」と推測する。当時の写真と比べると、大型の方は一部が白化しているように見えるが、一回り大きくなっているようだ。
当時、取材班を案内した元漁師で潜水士の片山敬一さん(79)が、その時の記録や魚群探知機で海底の地形を探りながら場所を特定した。カメラの映像で再会を果たした片山さんは「正直、生存しているかどうかは半信半疑だった。命のたくましさを感じる。本当にうれしい」と話していた。