「知らないと命守れない」試合中の心肺停止…戸惑う関係者に危機感 佐世保の空手道場がAED講習会

AEDの使用法や心臓マッサージについて学ぶ道場生ら=佐世保市

 「自動体外式除細動器(AED)があっても、使い方が分からないと命を守れない-」。そんな思いを強くした人がいる。長崎県佐世保市の沖縄空手道首里手松林会尚武館道場(佐世保尚武館)の安里廣之館長(75)と妻より子さん(74)。今年6月、選手が試合中に心肺停止となり、AEDを使って一命を取り留めた。2人はAEDを使いこなすことの重要さを実感し、道場関係者向けに講習会を開催し、啓発している。
 夫妻によると、雲仙市で開かれた県大会で、中学生の選手が打撃を受け試合中に倒れた。心肺停止の状態だったが、会場にいた佐世保市消防局に勤める次男の博文さん(46)と、米海軍佐世保基地の消防部局に勤務する三男の和徳さん(44)らがAEDを使って心臓マッサージを施し、病院に搬送された。
 原因は、呼吸と呼吸の合間に打撃による衝撃が加わり、呼吸できなくなったことだという。会場にはAEDが設置されていたが、多くの関係者は「戸惑い、立ちすくむばかりだった」(夫妻)。「もし、使える人がいなかったら大変なことになっていた」。そう思った夫妻は今月、道場生や保護者らを対象に講習会を実施した。指導したのは博文さんと和徳さんたち。「(AEDの)使い方が分からない」という反応が多く、夫妻は講習の意義を改めて痛感した。
 スポーツ選手を巡ってはサッカーの外国人選手が試合中に倒れ死亡したケースや、ワールドカップ(W杯)の日韓大会でも活躍した松田直樹さんが約10年前、練習中に倒れ急性心筋梗塞で亡くなるなど、試合や練習中に痛ましい事案が起きている。
 夫妻はAEDをレンタルし道場に設置することや講習回数を増やすことも考えている。「苦しんでいる人に遭遇したら助けられるようになってほしい」。夫妻はそう願っている。


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